『おいしいコーヒーの真実』 一杯のコーヒーに込められた願い

 低価格の原価にあえぐコーヒー農家を救うため、仲介業者を抜いたビジネスをしようと奔走する生産者のドキュメンタリー。


 1㎏の袋で、コーヒーは80杯飲める。

 

 エチオピアでの一杯は、日本円で4円もしない。

 

 しかし西欧諸国では90円もする。

 西欧では1㎏2000円で取り引きしているのだ。


 仲介業者は、利益の6割も持って行ってしまう。

 なのに、先進国は何の対処もしない。



 農家の家族には、「コーヒーを作らずに医者を目指すよ」と学校に通う人が現れる。

 だが、通学者は年々減る一方だとか。

 満足に教室すら開けず、破れかけになっている黒板が痛々しい。



 なにも彼らは大もうけと望んでいるわけではない。

 必要最低限の暮らしを求めている。


 彼らは子どもの医療すらままならず、医療支援すら受けられない子どももいる。

 

 だが、コーヒーの木が金になる実をつくるのには、4、5年かかる。

 しかも、彼らが大事に育てた豆は、先進国のスーパーに並んでいない。

  

 とある農家が、チャットという麻薬をコーヒーの代わり植える。


 欧米では違法の麻薬だが、栽培は許されている。

 その農家に割り当てられた農地は、コーヒーとチャット以外は育たないのだとか。


 枝20本で4ドル。年二回栽培できるので、お金にはなる。


 なにも、好き好んで植えているわけではない。金のためと割り切って植えている。


 当事国と、先進国との話し合いが行われる。

 だが、公平な話し合いなど行われない。参加人数も絞らされる始末。

 結局、先進国は途上国の発展よりも「支援による飼い殺し」を選ぶ。

 



 本作の印象的なポイントは、消費側と生産側の対比だ。


 イリーカフェ社内で、コーヒーのテイスティングを行っているシーンが流れる。

 社長は「エチオピア産のコーヒーは最高品質ですよ」と語る。


 その一方で、工場では何人もの女性が、豆を一つ一つ目視で吟味・選別している。

 一日8時間働き、0.5ドル以下の日給で働かされていた。


 彼らがまともな生活を送るためには、今の価格の10倍は必要になってくる。


 バリスタ大会の華やかさ。

 その裏側で、生産国では「子どもたちが教育できる場」「正当価格販売」を望んでコーヒーに祈りを捧げている。


 このような対比描写が随所に挿入され、現状の悲惨さを物語る。

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