『君の膵臓をたべたい(実写版)』 あなたはまだ、「なろう系小説は『異世界チートハーレム』しか流行ってない」と思っていませんか?
志賀は学校の教師をしているが、引き出しには退職願が入っている。
小栗旬氏の演じる役としては、珍しく陰キャだ。
志賀は、教師から図書室の整理を頼まれる。
助手の生徒に、志賀は当時知り合った、今は亡き少女の話をする。
志賀(北村匠海)は高校当時、クラスメイトの山内桜良(浜辺美波)から、
「膵臓を食べさせてくれ」
と言われる。
昔の人は、自分の弱っている部分と同じ臓器を食うと、悪い部分が直ると伝えられてきた。
志賀は、「共病文庫」というメモを読んでしまう。
桜良が「死ぬまでにしたいこと」が記された日記だった。
桜良は膵臓の病気で、余命一年だという。
親は知っているが、親しい人には伝えていない。
なぜか、志賀だけに病気を告げる。
桜良は、秘密を知った志賀を福岡まで連れ回す。
ラーメンを食い、ホルモンを食う。
しかも「シビレ」、つまり膵臓を。
孤独のグルメ一期で、松重豊さん演じる井之頭五郎が「なるほど、シビれる」といってたあのシビレである。
夜、二人はホテルの手違いで相部屋となってしまう。
部屋の豪華さに興奮する桜良に、志賀はどう距離を取っていいか分からない。
だが、周りからストーカーと認定されてしまい、嫌がらせを受けるように。
志賀はいたたまれなくなって逃げ出すが、桜良にとって志賀は落ち着く相手だったらしい。
親は気を使ってくる。
同じ理由から、友人たちには話せない。
まったく無関係で、自分に無関心な志賀こそ、病を打ち明けるにふさわしいのだと。
本作は、主人公とヒロインが、基本的にはくっつかない。
そのスタンスは、最後まで徹底している。
なぜ、桜良は志賀に身体の秘密を打ち明けたのか。
本作最大のポイントはそこに隠されている。
この作品の根深い部分は、
「ヒロインが主人公を選んだ理由」
に集約されていると言っていい。
なぜ、本作を取り上げようと思ったか。
実は本作、小説投稿サイト「小説家になろう」から映像化された作品だ。
なろうで投稿していたのをラノベ作家が見つけて、火が付いたという。
原作とやや違うとすれば、「主人公の現在を描いている部分」が非常に多いところか。
小説版が、
「もう既に終わってしまった物語」
を描いているため、どうしても内容が過去に引きずられてしまう。
現状を生きるキャラたちに響く展開がほしい、と思ったのだろうか。
なろう系といえば、「異世界、チート、ハーレムしかない」と言われ続けている。
だが、中にはこのような「難病もの」も書籍化されている。
どうか偏見を捨てて、なろうを楽しんでいただきたい。
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