『響 -HIBIKI-』 実はワナビ映画ではない

 素晴らしい才能に溢れているが人間性は最悪な少女が、小説を書く話。


 ヤンキーのたまり場になっていた文芸部を「暴力で」立て直し、部員を「暴力で」集め、先輩の本棚も「暴力で」整理する。


 文才は桁外れで、「JKごとき」とバカにしてきた老害を「小説だけで」黙らせるくらいの素晴らしい小説を書くらしい。


 どのような物語を書くのかは一切語られないので、響きがどんな小説を書くのかは不明。


 また暴力も「自分をバカにしてきたこと」はガマンできるが、「自分の周囲の人間を罵倒されたとき」には止まらないという特徴を持つ。



『君の膵臓をたべたい』の月川翔監督作品なので、安心して楽しめる作品だ。



 あと、すごく重要なのだが、実は彼女は「ワナビではない」。


 小説家を目指して書いているわけではなかった。

 新人賞に応募したのも、感想が聞きたかっただけなのだ。


「ネットで出せ」という応募要項をちゃんと読んでおらず、直筆原稿用紙で応募してしまったので、編集者に直接感想を聞く。ただし、感想を聞いたら電話を切ってそれっきり。


 どちらかというと、主人公の周りの方にワナビが集まっている。


 たとえば主人公の先輩は、『小説家ジュニア型ワナビ』である。

 彼女は小説家を父親に持ち、自分もなりたいと思ってネットにアップしている。

 それゆえに、主人公の文才に恐れを成していた。


 小栗旬さん扮する苦労人に見える作家は、『芥川作家ワナビ』である。

 描写がリアルで、彼は食べるために工事現場で作業をしている。

 四〇〇〇部も売れてそこそこ結果を出しているはずなのに、芥川を獲れず、落ち込みながら執筆している。


 また、主人公と同じ新人賞に出した青年は、『意識高い系ワナビ』である。

 ナルシストがすぎて周囲と衝突する。


 このように、主人公とは違って「負のベクトルに振り切れ」て暴力的な人間も出てくる。


 そういった人間たちが、主人公の持つ異才に影響されて変化していく様が面白い。

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