『ミッドナイト・イン・パリ』 昔はよかった、のか?

 主人公は婚約者と旅行中、パリに夢中になる。

 小説家を目指す彼は、脚本家としての成功を捨ててまで、パリに住むとまで言い出した。

 婚約者と不仲になった夜、彼は旧式の車に乗って、昔のパリへ飛んだ。


 四〇代にして、人生初のウディ・アレン。

 なるほど、こういう皮肉の効いた作品が得意なんだなと言った印象。


 婚約者の親と仲が悪い時点で、もう彼と婚約者とは通じ合えないと、なんとなく分かってしまう辺りが、見ていて辛い。

「ワナビ的に、理解のない人は相容れない」

 とか、そういう簡単な問題じゃないだけに、余計キツい。


 また、レコードの露天商と話している方が幸せそうに映る。


『本当に、昔ってよかったのか?』という、ノスタルジーがテーマ。

 古美術品売りの小説を書いている主人公は、「古いものこそ素晴らしい」という価値観を持っている。

 そんな彼にとって、このタイムスリップ現象は転機と言っていい。


 ヘミングウェイやピカソがいた時代へタイムスリップした主人公は、そこで現地の女性と恋に落ちる。

 絶対に叶わない恋だと分かっていても、のめり込まずにはいられない。

 小説も褒められ、いうことなしの主人公だったが。


 ダリが出てくるが、この辺の描写は全員共通なんだなと。

 手塚治虫が全部同じような描写になるのと同じか。


 ルイス・ブニュエルに「館に人が閉じ込められる」ネタを提供したり。


 だが、「これでよかったのか」と思わされてドキッとするシーンが、効果的に出てくる。

 大げさじゃなく、それでいてストレートに皮肉をぶっ刺してくる映画。

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