『12人の優しい日本人』 めんどくさい日本人品評会

 もし、日本に陪審員制度があったら、というモデルケース。


 20代の子持ちホステスが、凶暴な夫から復縁を求められた。

 もみ合いになった結果、ホステスは夫を道路に突き飛ばした。

 夫はドラックに撥ねられて死亡。

 これは正当防衛か、殺意があったのか? 有罪か無罪か?


 特別なセットもなく、陪審室のみで展開される演劇。

 なぜ、日本人というタイトルが入っているかは、この映画の冒頭から判断できる。


 とにかく、メンバー全員がめんどくさい。


 やたら仕切りたがる者。

 正義感から反対意見を出して、場を引っかき回す者。

 帰りたがる会社員。

 事実だけ提示して意見を言わない女。

 一番論理的だと思われた老人は、ただの議論好き。


 日本人の負の特性を集めた、まるで見本市のような現場だ。


 議論に決定打を出したのが、一番やる気のないトヨエツ氏。

「有罪になっても、どうせ執行猶予が付くんだから。無罪にしておけばいいじゃん」

 見事なまでのド正論である。


 ところが、

「自宅へ帰るルートを遠回りして、被害者を犯行現場まで誘導している説」

 が浮上し、一気に有罪案が強まる。


 話は二転三転し、有罪勢が有利に。

 無罪案は、「なんとなく」という意見だけが残るが、トヨエツ氏の一言で、今までの疑問が全てサッパリと解決される。


 終盤の畳み掛けるような推理は、日本人ならではという感じ。


 結構序盤で、一番正義感が強い人に、おばさんがある言葉を投げかける。

 この言葉が、実は正しかったことが終盤で証明されるのも面白い。

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