『はじまりのうた』 はじまりのネット配信商法

 家族も職も失った元音楽プロデューサーが、場末の酒場で歌う女性シンガーの曲に一目惚れする。

 彼女は売れると確信し、スカウトする。

 だが、シンガーはNYを去るという。彼女もつい最近、恋人と別れたばかりだった。


 主人公のシンガー役はキーラ・ナイトレイ。

 プロデューサー役のマーク・ラファロは、『アベンジャーズ』でハルクを演じている。


 プロデューサーはクビになった音楽事務所に赴き、主人公の曲を聴かせる。

 だが、会社側は『まずPVを作れ』と聞かない。


 負け犬同士が手を組み、「路上ゲリラ撮影のアルバム」という、当時としては新しい試みの音楽を形作っていく。


 かつて育てたアーティストが、スポンサーを買って出たり、メンバーに入ってくれたりと、協力してくれる。


 時には撮影現場にいた子どもをコーラスに使い、時には地下鉄のホームで警察に追いかけられる。


 ヒゲ面になってアーティストとしてインタビューに出ている元彼を見て、主人公は即刻その心境を歌にする。

 歌いながら、相手の留守電に発信するシーンは、いかにも海外映画っぽい。シャレが効いている。


 互いのプレイリストを聞きながら、街を練り歩くシーンが開放的で実にいい。


 街中でベンチに腰掛け、キーラ・ナイトレイが勧めるのは『As Time Goes By』。

『カサブランカ』のテーマソングだ。

 音楽があるだけで、街の景色が変わる。


 そういえば、『劇場版 ラブライブ!』で、高山みなみ氏演じる謎の少女も、この歌を路上で歌っている。こちらも2015年作だ。

 その時も、なんてことのない街の風景がバックだった。

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