『あん』 追悼 樹木希林さん

 流行ってないどら焼き屋に、バイトを希望した七〇歳の老婆が主人公。

 彼女は、50年粒あんを作り続けてきた。

 粒あんを手作りに変えただけで、店には行列ができるように。


 しかし、「老婆は『らい病』を患っている」と、オーナーから知らされる。

 老婆の住所は、らい病患者の隔離区域だったのだ。


 辞めさせるべきだというオーナーの意見を押し切り、彼女を雇い続けることを決めた。


 本作を知るきっかけは三つ。

 樹木希林さんが主役を演じたこと。

 Netflixで配信されたこと。

 この二つだけだったら、「『悪人』もいいな」と思った。


 もうひとつのきっかけが、決定打となる。


 ドリアン助川さんの名前を久々に見たこと。


 この映画は、彼の原作だという。


 ドリアンさんは、バンドメンバーの薬物使用によって、業界を干された。

 その後、作家に転身。


 樹木希林さんを追悼する情報番組に出演。「叫ぶ詩人の会」だったころより、丸みを帯びた様子で現れた。



 「こんなに辛気くさくない難病ものは、初めて見たな」

 というのが正直な感想。

 

 たいてい、障害や重病をテーマにした作品は、どこか重苦しく、変に美化されていて、胡散臭く映るモノだ。

「こんなキレイな心を持った人間なんて、おるかい」と。

 余計に自分の心が荒んでしまったり。


 本作はそんなに嫌味な印象を受けない。

 必要以上に、感情に訴えかけない。

 自然体のままで視聴できる。

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