『THE 有頂天ホテル』 新年まであと二時間

 新年を迎えるまでの二時間を描いた、ホテル内でのドタバタ。


 つつがなく新年を記念しようと、ホテル副支配人の主人公は奔走する。

 だが、ことごとくミスが生じてしまう。

 同僚による書き初め発注ミス、客の持ち込んだアヒルが逃亡、総支配人が白塗りメイクのまま失踪。

 勘違いの連続から生じるアクシデントの数々。

 こうして、最悪の大晦日が始まった。


 トラブルに巻き込まれる副支配人を、役所広司が真面目に演じているので、余計に滑稽に映る。

 最近では『渇き』や『バケモノの子』など、粗暴でやさぐれた役が多いが、本作では真面目な紳士の役だ。

 

 元妻が絡んだスピーチのシーンで見せる屈辱の顔が、最も印象的である。


 三谷作品おなじみのメンバーに加え、香取慎吾氏まで登場する。

 ベテラン勢で脇を固めているからか、芝居の安定感が凄い。

 唐沢寿明氏にチンピラ風マネージャーをやらせるとか、三谷幸喜監督でないとまず見られないのではなかろうか。


 群像劇なので伏線など複雑なはず。よほどうまくまとめないと、失敗してしまう。

 なのに、頭にスッと入ってくるシナリオは、さすが三谷幸喜氏と言うべきだろう。

 騒ぎがエスカレートし、しっちゃかめっちゃかな展開になってもキレイに締める。

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