『ジェラルドのゲーム』 自縄自縛のサイコサスペンス

 変態プレイを拒絶したら、夫ジェラルドが心臓を抑えながら死亡。

 洗面所にはバイアグラがあった。服用しすぎたのだ。

 両手首には手錠がされ、手は片方ずつベッドの柱にくくりつけられている。


 手錠は本物。「オモチャだと雰囲気が出ない」との配意からだ。

 その余計な気配りで、彼女は窮地に立たされる。


 Netflixのオリジナル映画。

 冒頭、旅行鞄の中に手錠を納める女性のシーンが異様だ。

 ほんのイタズラ心だったのに、それが災難を引き起こしてしまう。


 人里離れた家で、邪魔されないようにと人払いもされている。

 あと三日は助けが来ない。

 絶望的な状況の中、彼女の脳は妄想へ逃げる。

 妄想に現れた夫や自分。二人のアドバイスのおかげで、水は確保できた。


 しかし、手懐けた迷子犬が、床に転がっている夫を食い始める。

 一切れ二〇〇ドルもする神戸牛を戯れに上げたから、味を占めてしまったのだ。


 妄想はエスカレートし、死神の幻想にまで悩まされることになる。

 

 なぜ、自分はジェラルドと結婚したのか? 

 どうして、うまくいかなかったのか?

 考えていくうち、自分の父と夫が似ていることに気づいた。


 一二歳のころ、皆既日食のあった日を思い出す。

 丈の短いワンピースを着たのがいけなかったのか、自分を膝に載せながら、父が、突然シコり始める。

 それは頭の片隅に追いやったトラウマだった。


「自縄自縛によるサイコサスペンス」という、風変わりなドラマ。

 主人公は自分の過去を遡って、トラウマと向き合うことで、解決策を見いだし、状況を打開していく。

 妄想の真相からも、本作はトラウマからの解放がテーマだったと理解できる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る