『バーフバリ 伝説誕生』 ミュージカルが苦手な人にこそ見て欲しい

 滝の下で拾われた少年が、伝説の王の息子だったという、インド版の貴種流離譚。


 オレにとって、初めてのインド映画である。

 どれもミュージカル調だと聞いていたので、インド映画には苦手意識があったからだ。

 だが、本作は馴染みやすかった。


 前半は、主人公がバーフバリ・ジュニアと分かるまで。


 天女に導かれて滝を登り切った先にいたのは、天女そっくりの美女。

 どうにかお近づきになりたいと、忍者めいた隠密術で美女の腕や肩にイラストを塗る。

 彼女は、圧政をしく国王に反旗を翻すレジスタンスの一員だった。


 肩に塗るときなど、弓を構えるヒロインの矢にヘビを這わせて、注意を向けさせている間にタトゥーを塗るという手の込んだもの。


 ヒロインは自分に恥を掻かせた主人公を殺そうとするが、自分の「女として生きたい」本心を呼び起こした主人公と惹かれ合うように。


 後に、レジスタンス排除のために送り込まれた大群を、主人公は雪崩を起こして排除する。

 ソリに乗って、ヒロインと共に雪崩から脱出するシーンは大迫力だ。


 後半は、先代バーフバリがいかにして王になったかの話が語られる。


 後半の戦闘がまた目まぐるしい。

 国を攻めにきた蛮族の数は10万。

 大して自国戦力は2万5千。

 投石器を用いて迎え撃つ。

 さらに、先代バーフバリは石の球に布を結びつけ、相手に投げた後で火を放つという奇策に。

 バーフバリの甥も負けておらず、先端にプロヘラの刃を取り付けた馬車で、敵陣に乗り込む。

 まるで、『300』を見ているかのような錯覚にとらわれる。

 ここが、ミュージカルが苦手でも入り込めた理由かも。


 見た目はヒゲのオヤジなのに、やたらカッコいい。

 最初から最後まで、テンションが高い映画。


 本作は、いわゆるエピソードゼロだ。

 前日譚の多くは、あまり高い評価を得ないモノである。

 結末が分かっているせいだ。


 しかし、本作はラストの引きをダイナミックに描くことで、その弱点を克服している。


「ええ、ここで終わるのかよ!?」という仕掛けに、どうか驚いて欲しい。

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