『葛城事件』 史上最悪の「どうしてこうなった」

 無差別通り魔殺人を犯し、死刑囚になってしまった息子の経緯。


 三浦友和演じる「死刑囚の父親」が主人公だ。

 彼が、とにかく救いようのないクズとして描かれている。

 何もかもコイツが悪いのだなと。

 いわゆる毒親で、親と言うより「支配者」という方が正しい。


 一番印象的なのは、次男と妻が主人公の元を離れて、コンビニのナポリタンを食べているシーン。

 小さいアパートなのだが、父親がいないほうが幸せそうに映っている。

 他愛のない会話が非情に尊く描写されている。

 で、アパートを探し当てた父親がそれをぶち壊す構図になる。

 こう見ると、やはり全ての元凶は父親だったのだ、と思わせられた。


 長男の息子が、長男を送り出す。

「いってらっしゃい」じゃなくて「バイバイ」と。

 彼が家でどういう扱いを受けているかを物語るシーンだ。

 同時に、「ああ、もうこいつは死ぬんだな」と痛感させられた。

 彼が、次男の潜伏先を、父親に密告したのだから。


 長男はリストラされた為、公園で暇を持て余している。

 生まれて初めてタバコを吸い、むせて、吸い殻を道ばたに捨てる。

 だが、すぐに引き返し、拾ってちゃんと処理するのだ。

 こういった意志の弱さが、長男の末路を物語っている。


 田中麗奈が扮する次男の妻が、死刑反対を妻に訴えるシーン。

「あの人は誰からも愛されていなかった」と、主人公の妻に向かって叫ぶ。

 普通、映画にこんなシーンなんかが挿入されていると、白々しく映る。

 しかし、これまでの次男の扱いを見ていると、納得させられてしまうのだから不思議な気分だ。

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