『タイピスト!』 コーチモノのお手本のような作品

 1950年代フランス。

 主人公は秘書になりたくて田舎から出てきたが、ドジばかり。

 結局、出来が悪くてクビに。

 しかし、タイプライター早打ちの腕を見込まれて、社長と二人三脚で世界チャンピオンを目指す。


 最初、主人公は1本指打法でズドドドーッと打ち込んでいた。

 社長の指示で10本指への矯正を行い、読書による難解な文学書のタイプ。

 ピアノレッスン、ジョギング、心理戦も扱う。

 気が遠くなるような地道な訓練を、秘書仕事っぷりと共にコミカルに描く。

 

 試合も面白く、故障したタイプを床にたたきつける人、集中力が切れて、倒れる人まで出る始末。

 ライバルも個性的で、実力もあって、いかにも悪役といった感じ。

 フランス大会決勝、気持ちで負けている主人公の闘志を燃やすため、コーチである社長は彼女をわざと怒らせた。こういった心理戦も面白い。

 まるで「ロッキー」を見ているかのような緊迫感が、試合会場に漂う。


 社長との間に恋心が芽生えるが、世界に届きつつある主人公の邪魔をしてはいけないと、社長は離れてしまう。


 バトルモノとしても恋愛モノとしても、コーチモノとしても見応えのあるユニークな作品。

 ただタイプライターをバチバチ叩いているだけで、こんなにも面白いとは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る