第6話 雷
Side トオル
「片付けさせて悪かったな」
家に戻るとキッチンで後片付けをしていたユキの目に涙が溜まっていた。
「泣いてたのか?」
「なんでもない」
「なんでもないわけないと思うけど」
オレが言い終わるや否やドーンという音が響いた。
雷だ。
「ひぃ~」
ユキが両手で耳を塞いでしゃがみこむ。
そう、ユキは雷が嫌いというより怖い。
ガタガタと震えている。
「ユキ、落ち着け。通り雨だすぐにやむ」
立たせるとリビングのソファに座らせる。
隣に座るとがむしゃらにしがみ付いてくる。
落ち着けというのは無理なんだろうな。
ユキの耳にイヤホンを差し込んで、よしよしと背中をなでた。
気休めだろうけど少しはましだろう。
オレの予想通り雨はすぐにやんだ。
きまり悪そうにユキがイヤホンを返してきた。
立ち上がろうとするユキの手を摑まえる。
「みっともないとか思ってるんでしょ?」
ふてくされたように言う。
「そんな事思ってないよ。それよりおまえ、一人の時どうしてるの?」
年に数回はあるはずだ。
「耳栓して布団被ったり、トイレに籠ったり」
何か想像できて笑ってしまった。
「オレが行ってやるよ。雷がなったらおまえのところに行ってやる」
喜ぶと思った。
”トオル大好き"そう言ってくれると思っていた。
なのに、ユキからでた言葉は
「ダメだよ」
かぶりを振って
「トオルが行くのは有希子のところだよ」
水を浴びせられるとはこういうことを言うんだろうか。
「ユキ、好きな子いる?」
なんでこんな事を言ったんだろう。
ユキに好きな子がいるんじゃないかそんな気がしたんだ。
頬を染めてユキが頷く。
ああ、やっぱり。
「でも、その人には好きな子がいるから」
悲しそうに笑う。
そんな悲しそうな顔をするなよ。
言ってしまいたかった。オレがずっと側にいるから。
でも、言えない。
Side ユキ
「片付けさせて悪かったな」
トオルが帰ってきた。慌てて涙をぬぐった。
「泣いてたのか?」
「なんでもない」
「なんでもないわけないと思うけど」
トオルが言い終わるや否やドーンという音が響いた。
雷だ。
「ひぃ~」
両手で耳を塞いでしゃがみこんでしまう。
そう、雷が怖い。怖くて怖くて仕方がない。
落ち着けと言われても無理な話。
ガタガタと震えてしまい、ソファに座らせてくれたトオルにしがみついてしまった。
溜息とともに耳にイヤホンを入れられ、背中をなでられた。
イヤホンからタイスの瞑想が繰り返し流れてくる。こうしていると落ち着く。けど、
雷がやんだのでイヤホンを返して離れようとすると腕を掴まれた。
「みっともないとか思ってるんでしょ?」
恥ずかしくてふてくされたように言う。
「そんな事思ってないよ。それよりおまえ、一人の時どうしてるの?」
「耳栓して布団被ったり、トイレに籠ったり」
クスリとトオルが笑った。
ああもう情けない。
「オレが行ってやるよ。雷がなったらおまえのところに行ってやる」
思いがけないトオルの申し出に嬉しかった。
でも、
「ダメだよ」
かぶりを振った
「トオルが行くのは有希子のところだよ」
そう、トオルには有希子がいる。
「ユキ、好きな子いる?」
突然トオルが聞いてきた。
赤くなるのがわかった。
不意うちだ。
「でも、その人には好きな子がいるから」
ようやく言った。
言ってしまおうか。
でも、言えない。
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