ヘタレなボクでもいいですか?
由友ひろ
第1話
ボクの初恋は、かなりスローペすースだった。
家が近所で、同じ登校班だった佐藤花梨。色素薄めの白い肌、少しくせ毛の長い髪を二つに結び、いつもピンクのリボンをつけていた。
よく喋り、よく笑い、いつも数人の女の子の中心にいたっけ。目がとくに印象的で、ただ大きいってだけじゃなく、表情豊かでいつもキラキラして見えた。
「花梨ちゃんは、だれが好きなの?」
まだ低学年、好きの意味なんてわからないけれど、コイバナがブームで、女の子たちは「だれ君が好き!」と言っては、キャーキャー盛り上がってた。
花梨は思わせ振りにクラスを見回すと、
「そうねー、…」
ボクとばっちり目があった。「…、ユウ君かな。青木ユウ君。」
女の子たちはキャーッと叫んで、一斉にボクのほうを見た。
ボクは真っ赤になりつつも、聞こえていないふりをして、ひたすら筆箱の中の鉛筆を数えるふりをしてたっけ。そんなことしたいわけじゃないのに、熱中して聞こえなかったふりをしたんだ。
花梨のことを女の子として意識するようになったのは、この後くらいからだったと思う。
単純だよね。花梨は偶然目があったから、気まぐれにボクの名前をあげたにすぎないのに、そのときのドギマギした感情が、いつの間にか恋愛にすりかわっていたんだから。
小学校のときは、奇跡的に6年間同じクラスだった。
あのときは、本当に奇跡だと思ってたんだ。
ボクの小学校は、一年、二年、三年、五年のときに不規則にクラス替えがある。人数も多くて、一学年八クラスだった。 たぶん、六年間ずっと同じクラスだったというのは、ボク達以外いなかったはずだ。
本当は、友達を作るのが苦手で、本ばかり読んでいたボクは、先生達からマークされていたんだと思う。
唯一話すのは花梨だけで、花梨と離すと、ボクは孤立すると思われていたみたい。だから、奇跡でもなんでもなく、先生達からしたら必然だったんだろう。
花梨は、ボクがあまり喋らなくても、気にすることもなく、なぜかいつも話しかけてきた。返事があってもなくても、そんなに気にならないらしかった。
社交的な花梨と内向的なボク。
正反対なボク達が初めて会ったのは、小学校の登校初日。
登校班の列に並んだとき、親同士が挨拶したんだけど、そのときにうちの母親が、
「うちのは引っ込み思案で困っているんです。お友達を作るのも苦手で…。花梨ちゃん、うちのユウのお友達になってくれるかな?」って言ったんだ。花梨は、たぶんそれを忠実に守ってるんだろう。 朝は登校班で一緒に登校し、帰りはいつも花梨がボクに帰るよと声をかけにくる。
それが当たり前みたいな感じになって、中3の今になってもかわらず続いていた。
中学校には登校班は存在しないんだけど、なぜか毎朝花梨はうちの前で待ってるし、帰りも当たり前みたいに迎えにくる。中三で初めてクラスが別になったんだけど、やはり変わらなかった。
そのせいか、花梨とボクは付き合ってるって噂になり、なぜか花梨も否定しない。…というか、男子に告白されるたびに、
「好きな人がいるから。」
って断るもんだから、いつも一緒にいるボクのことだろうってことになって…。それは、噂というより周知の事実と認識されていた。
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