最後の夏休み

Act.17[最後の夏休み一日目]

あれから5年ほど時が経った。

小学校最後の夏休みか…。漏れは呟いた。

だけどそれ以上のイベントが用意されていた。それは…

引越しというものだ。

ったく、母さんも母さんだ。あまりに急すぎて椅子から転げ落ちた。

「準備は終わった?あと27日で引越しなのよ?」

おばあちゃん

「ちょっとは待ちなさいよ。清行君が卒業してからでも遅くないわよ」

「遅いの。だからこんなに急いでるのよ」

母はせっかちだ。漏れがこの家に来てからというもの、早く早くと急かされ学校へ行くといつも校門が閉まっていて挙句、1時間も待たされていた。

おばあちゃん

「はぁ。あなたはほんとせっかちね。ちょっとは落ち着きなさい」

そのとき、家の黒電が鳴り響いた。

漏れ

「もしもし?」

虎彦

「あ、清行?今から遊ぼーぜ?」

漏れ

「あー、いいよ。今からでも家に出たかったから」

そう告げて受話器を置いた。

漏れ

「ちょっと遊びに行ってくる」

そう母さんに告げて家を飛び出した。

……

虎彦

「よ、宿題終わった?」

漏れ

「あんなん終わるわけないって」

虎彦

「だよなー」

いや、1日目に夏休みの宿題終わったらどれほどいいか…。

洸哉

「そんなすぐ終わったらどれほどいいか…」

洸哉も同じこと言ってる。

柔一

「辰は終わらせたんじゃない?」

あー、翠屋家は代々伝わる大工家で結構大変らしい。

結果早く終わらせないと手伝いで埋まってしまうため、遊びに行くどころか、宿題が一切出来ないだという。

最後の夏休みぐらい遊ばせればいいのに。と漏れは心の底思ってしまった。

母さんもだけど…。

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