1年目
Act.1 拾い子
みーんみーん。そんなセミの声が遠く響く。これが漏れの"5年と3ヶ月目"でした。回りは緑。昨日はお母さんと家の中で寝てたのに…。なんでだろう?漏れは泣いた。泣いた。泣きまくった。
??「ん?こんなとこに子供?」
漏れ「うわっ!?」
目の前にいたのはしましまの虎がいた。
??「驚くことねーだろ?俺は虎彦。大島虎彦だ。よろしくな」
漏れ「とらひこ?君、人間じゃないの?」
虎彦「そうだ。君の名前は?」
漏れ「僕は、山本清行」
虎彦「清行か。いい名だね。君はなんでここに?」
漏れ「お母さんに捨てられた」
多分、そうだ。漏れは捨てられたんだ。
虎彦「うちんち、旅館やってんだ。部屋の1個2個は空いてるからうちんとこ来いよ。おなかすいてるだろ?」
ぐーーー。鳴った。間違えなくお腹が空いてる。
虎彦「ほら、やっぱ。お腹が空いてるじゃん」
と漏れは立ち上がった。そして二人で森から出た。
??「虎彦ー?」
今度は竜が叫んでいた。竜?竜!?
虎彦「なんだ?辰樹」
辰樹「それなんだ?人間か。連れてくのか?」
虎彦「うん。お腹空いてるみたいだし」
辰樹「そうなんだ。俺は翠屋辰樹。よろしくな。うち宮大工なんだ!」
漏れ「僕は、山本清行。よろしく」
虎彦「ほらついた」
目の前にすごくでかい建物があった。看板が入り口の上にあり、[おおしま]と書いてある。そのとなりには…りょかんって読むのか。さっき虎彦が言ってた。
ガラガラガラ…
虎彦「いらっしゃい!ここが俺の城だ!」
??「うるさいわね。虎彦。ってあれ、人間の子供がいるわ」
虎彦「捨てられてたから拾ったんだ」
??「いいわ。上がって。お腹は?」
ぐーーーーさっきより大きい音が鳴った。
??「あははは。ちょっと待っててね」
と虎彦に似た獣人が奥へと消えた。
漏れ「今の誰?」
漏れは首をかしげて虎彦に聞いてみた。だってわからないんだもん!
虎彦「俺のお母さん。虎さんて皆から呼ばれてる」
虎さん「ほらできたわよー。辰樹君もどーぞ」
コトッとお皿がテーブルの上に置かれた。それは鶏そぼろご飯。
辰樹「やったー!」
漏れ「うわー!!美味しそう!」
虎彦「ばーか。美味しそうじゃなくて美味しいんだよ!」
でも、なんと美味しそうなご飯!鶏そぼろご飯だ!
皆「いただきまーす!」
虎さん「どーぞ」
一口目、ぱくっと食べた。うーん、美味しい!なんとも言えない美味しさだ!母の味ってこれを言う!?
突然に、
虎さん「君、どうしてこんな田舎まで?」
不思議そうに聞いてきた。そりゃ、急に息子が人間と一緒に帰ってきたら。
漏れ「お母さんに捨てられたんだと思います。それで泣いてたら虎彦が来たんです!」
虎さん「君、歳はいくつ?」
漏れ「5才!」
虎さん「言葉、丁寧だね~。5才かー。うちの虎彦も5才なんだよ~」
虎彦「うわー偶然!」
……
皆「ごちそうさまでした!」
それにしてもうまかったー!こんなに食べたのは久し振りだ!
虎彦「美味しかった!」
虎彦「そうだ、お母さん。皆のとこに電話入れといてくれない?」
虎さん「わかったわ」
虎彦「今日家で歓迎会するって」
虎さん「誰に入れる?」
虎彦「柔一と峻と深、洸哉、京慈、孝之助!」
虎さん「わかったわ」
漏れには知らない名前ばっか出てきた。
そりゃ、初めてだもの。そりゃ漏れにもわかんないや。
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