第5話

5話 うごめく陰謀


「これが例の対象者の資料です。身体検査も行いましたが特に異常はありませんでした…。桁外れの回復力です。それと身体に異常が無かったのと本人の希望もあり、昨日退院しています。」


白衣を着た男が神妙な面持ちでそう話す。対面には黒服の男がおり、その話を白衣の男から渡された資料を見ながら真剣な表情で聞いている。


ここは見た感じ応接間で2人の他には誰もいない。聞かれたく無い会話なのか比較的小さな声で話している。


男達に目を向けてみる。

まず、白衣の男は年齢は50歳くらいで身長は160㎝〜165㎝程。黒縁のメガネを掛けており粘着質なベットリとした目つきだ。体型は割腹がよく、お腹が異常に突き出している。肌色は白い為に白衣とコラボして白豚に見える。


次に黒服の男だが、こちらは白豚とは対照的だ。

年齢は30〜40歳くらいで身長は180㎝程。体型は筋骨隆々で左頬には深い大きな傷がある。目つきは鋭い目つきで、鋭利な刃物を連想させる程だ。肌色は褐色で黒服とコラボして黒豹に見える。持ち物は隣に銀色のアタッシュケースが置いてある。


また、2人が座っているのは革張りのいかにも高級そうなソファーで、中央には木目調のローテーブルが置かれている。


そのローテーブルの上に何枚か資料が置いてあり、1枚目の資料に後藤雅史と名前が記載されてある。

また、住所などの個人情報も詳しく書かれており顔写真も添付されている。(不細工な顔だな)

またその他にも、今回の事故のオペ内容や入院経過なども事細かに記されており、決して外部に漏らしてはいけない内容だ。漏れれば、テレビとかでも報道されている個人情報流出問題として大問題になるだろう。


その資料をくまなく見た黒服の男は、深く頷くと白衣の男に話しかける。


「資料は拝見したが、異常だな。人間とは思えない。これは本当に事実なんだろうな?」


そう言うと、白衣の男を鋭い目つきで射通す。

見られた白衣の男は、蛇に睨まれた蛙の様に固まって動けない。

顔面からは血色が失われ、表情は恐怖で彩られている。額からは冷や汗が滲み出ており、その汗が床に滴り落ち”ポタ“と音が鳴る。


音が鳴った瞬間に黒服の男は目線を逸らし、また資料に目を向ける。

対して白衣の男は、視線が外れた瞬間に血色が良くなり元の顔色に戻る。また、息をしてなかったのか息づかいが荒く何度も深呼吸をしている。


「本当にこれは事実です。。。この対象者を調べれば我々の計画も進展するかと。計画が進めばあのお方の目的に大きく近づける様になるはずです!」


そう言うと、今までの表情が嘘の様に力強い表情に変わり、身を乗り出している。また、口調も興奮気味だ。


「資料は事実みたいだな。。。対象者を調べたら、党首の目的が進展する可能性が非常に高い。。。」


そう言うと、黒服の男はしばらく目を閉じて考えている様子だ。


数分経ったであろうか、いきなり目を開ける。その後、直ぐに白衣の男に淡々と喋り出す。


「党首からある程度の権限を私は与えられている。私の方でこれからの計画を立案し実行する事にする。まず、対象者に接近し生活状況を確認した上で確保する。確保後は党の研究機関に移送し調べる事になる。また、党首には後ほど事後報告する事にする。以上!」


そう言うと2人とも起立し姿勢を正す。その後、手を開いたまま心臓(左胸部)に添えて掛け声をかける。


「我らには栄光を。愚民には死を。」


その掛け声の後、黒服の男はアタッシュケースに資料を入れ、白衣の男に声を掛ける。


「また進展した場合は定期の連絡にて報告する事にする。では失礼する。」


“バタン”


黒服の男が立ち去り扉が閉められる。

その途端に白衣の男は深いため息を吐き、安堵の表情を浮かべたあと、深々とソファーに身体を沈める。10分程そうしていただろうか?しばらくして身体を起こし、ローテーブルに手を伸ばす。

事前に淹れていたコーヒー(もう冷め切っている)を手に取り、一気に飲み干す。


“ゴクゴクゴク”


一気にコーヒーを嚥下した白衣の男は苦虫を噛み潰したような表情で吐き捨てる様に呟く。。


「クソ!私を舐めるなよ!党首に気に入られてるからって調子に乗るのも程々にしろ!ああ〜もう!!腹が立つ!!」


白衣の男はそう言うと、思いっきりローテーブルを蹴り上げる。


「ガコン。」


蹴り上げるがローテーブルは微動だにもせず、衝撃音も小さい。。

上に乗っていたコーヒー(黒服の男に淹れた)が振動で少し溢れた程度であった。(力弱!!)


「う、う、痛っ、クソ〜!!」


苦悶の表情で、蹴り上げた足のつま先を抑えて蹲っている。しばらくして痛みが引いたのか、何事も無かった様にソファーに座り直す。

その後、気持ち悪い粘着質な笑顔を浮かべてボソボソと喋り出す。


「まあ資料にはワザと記載してない情報もこちらにはあるし。アイツの失敗が目に浮かぶ。。。ヒヒヒ。。」


応接間には気味が悪い笑い声が、しばらく響いているのであった。。。

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