第4話
4話 面会
「……。暇だ…。耐えられないこの暇さに。。早く筋トレがしたい。。。」
ここは救急指定病院の一般病棟の個室(病室)だ。
昨日の午前中に意識が回復して、状態改善したとの事で、昨日の午後にこの病棟に移動になった。
移動して採血やら身体の異常がないかの動作確認をし、健康体で治療の必要なしと医師からの診断を受けた。
それに伴って、急遽明日の午後に退院が決まった。
ここは俺の勤務病院の系列とかでは無い。
近所にある救急病院で事故後の俺の状態的に、救急医療体制が必要な病院でオペをしないと助からないという、危険な状態であったらしくここに移送されたという訳だ。
運ばれた後、すぐにオペをしたそうだが、内臓の損傷が激しくオペ中に亡くなる危険が高かったそうだ。
だが、何とか生命をとりとめてオペも無事に終了。
その後ICUに移動したという経緯である。
そんな経緯でこの状態だ。。。本当に切り傷一つも無い状態。。
逆に、なんかあったの?て言うくらい素晴らしい状態の身体だ。
病院の人達も物凄く驚いていたし。。。。
と言うよりも、多分気味が悪かったのであろうな。。。
でも俺も看護師さん達の気持ちは分かる。絶対に本来はありえない回復力なのだ。。
まだ俺自身もこの状況を飲み込めておらず、頭の中は整理できていない。疑問な点ばかりだ。。
そもそも一番疑問なのは、あの女性が言った事だ。
【秘めたる力】と【せっかく蘇ったのに】と女性は言っていた。
今回の異常なまでの回復力はその秘めたる力が俺に備わっており、あの血液が沸騰する様な感覚が身体の回復力を異常に高めたものではないかと考えられる。
「それしか考えられない…。」
それにこの力を試してみたい気持ちもある。多分だが、回復力以外でも色々と出来る気がするのだ。
あの女性にも使い方などの説明は聞くことが出来なかったしな。
また、昨日の一件で自分の身体に違和感を感じており、自分でもおかしいと思うのだが、何でも出来そうな感覚があるのだ。
何と言ったら良いのだろうか…。うーん。
例えて言うなら、自分には不釣り合いなスペックのパワードスーツを着て、以前の様な力で殴ったつもりが軽く鋼鉄の壁を突き破ってしまった!という様な感じだ…。頭が弱くて説明出来ない(笑)
とりあえず何でも試してみたい。
湧き上がる力が有り余ってうずうずしている。。。
そんな事を考えていた時だった。
ドアを叩く物音がする。
“コンコン”
ん?誰だ?俺の会社の面会かな?そういや明日退院と連絡していなかったな。そんな事を考えながらドアに向かって入室を促す。
「どうぞ!入って大丈夫ですよ!」
そう言うとドアの外側から“失礼します”と聞こえたと思ったら、ドアから2人入ってくる。
「すいません。休んでいる時に。。今回はうちの子が大変な事をしでかしてしまいすいませんでした!!
いくら謝っても謝りきれないくらい申し訳ない事を…。本当に…。う、う…。」
そう言うと、入って直ぐに思いっきり頭を下げて謝ってくる。
年齢は50歳くらいの夫婦であろうか、下げた頭髪に白髪が多く混じっている。
そういや、突っ込んで来た車の事すっかり忘れてたな。
思いがけない力が手に入って、嬉しくてすっかり忘れてた。
いやいや俺、うっかりはんだわ。
まあ、突っ込んで来た事に対して怒りが無いとは嘘になる。
だが、筋トレと未知なる力が俺を待っていると思うと、嬉しさの方が大きく車の運転手に対する怒りが無くなっている感じだ。。
それに…。何故、謝りに来たのが運転手の家族なのだ?普通は運転手が見舞いや謝罪に直接くるのが普通だが。。
うーん。まあ、この2人に聞いてみるか。
「もう怒って無いですから頭を上げて下さい。。。それに身体も大分良いですし明日退院になりましたしね。。
ああ、それと聞きたいことがあるんですが、運転手のあなた方のお子さん?は如何されたのですか?」
俺がそう言うと、ゆっくり2人の夫婦らしき人は頭を上げてこちらを見てくる。2人とも憔悴しきっており、女性の方はやつれて目に隈ができている。。
女性はしばらく俺の方を見て驚いた顔でぼけっとしている。
男性の方は若干口がだらしなく空いている。(簡単に言うとぽかーんとして驚いてる感じか)
まあ、死ぬかもしれない大事故と警察とかに言われていたのであろう。
そりゃあ驚くわな。こんなに元気だと。なんか元気である自分が申し訳なくなるな。。いっそ筋肉ダンスでもこの夫婦らしき人に、帰る前に披露してやるか?退院前のデモンストレーションとして。
そんな事を考えていると夫婦らしき人は話しかけてくる。
「すいません。自己紹介もせずに。私共、原粕圭介の親で原粕敏夫と妻の米子と申します。
今回は息子が飲酒運転をし、この様な大きな事故を犯してしまって申し訳ありません。本当はこの場に、罪を犯した圭介が来なければいけないのですが…。
取り調べなどで拘置所から出れない状態で…。
本当に申し訳ないございませんでした!!」
そう言うとさらに土下座をして謝ってくる。。。
うーん。俺的には、もう良いのだが。適当に言って早く帰ってもらおうかな?
「お二人の謝罪の気持ちは痛いほど伝わってきました。
私も怒ってないので大丈夫ですよ。」
俺は適当にそう言うと、作り笑顔で微笑む。(俺の笑顔は恐ろしいと職場の同僚に言われた事があるな。作り笑いだとわかるであろうか?)
「すいません。。。それと失礼ではありますが、ご体の具合は退院する程まで回復されたのでしょうか?」
心配する様な表情と探る様な表情が混じった感じでこちらを見て話しかけてくる。
「手術された執刀医の先生の腕が良かったのと、私の回復力が桁外れでもう本当に大丈夫です。帰られて大丈夫ですよ。」
夫婦の最期の表情が面倒かったので、早く帰ってもらおうと思い退室を促す。
「すいません。こちら、つまらない物ですが食べられて下さい。
失礼します。。。」
そう言うと夫婦は床頭台の台に紙袋を置き、また頭を下げて部屋から出ていく。
「はあ〜。疲れた。。あ!筋肉ダンス披露するの忘れてたではないか!!ーーーー!!」
そんな声が廊下にまで響くのであった。。。《神の声:筋肉ダンスより身体休めとけ!!》
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