8月23日 おじさんからの電話「ワクチン打て」


 最近のびいは、少し状態がましになっていて、電話を取った。親戚のおじさんからで、フランスに帰らないのか、と聞かれた。びいはパス・サニテール、ワクチンパスを導入されてしまったら、もう帰れないと言った。


 それはとてもはっきりしていて、びいは観念したようだった。


 エマニュエル・マクロンがまさかそこまでするとは。


 どちらにせよびいは、金属アレルギーがあるからワクチンは絶対に打てないことははっきりしていた。インフルエンザか何かの注射で気分が悪くなり、その場に寝たままになったことはあった。あれは大学の頃で、今ならもっと重篤な症状が出るだろう。今は大型魚に蓄積している水銀でさえ、赤く痒くなったり、即座に口内炎が出たり、反応するくらいだから、命に関わりそうだ。mRNAの仕組み的に、4日で消えてなくなるなどと言ってはいるが、怪しいものだった。動物実験でもそうだったが、ワクチン自体の毒性よりも、ADE(抗体依存性増強)のせいで、軽い風邪のウィルスからの攻撃に激しい反応が出るんじゃないかということの方が、致命傷になっていくかもしれない。


 大体、ワクチンの中に含まれるヒドロキシブチル(ALCー0315)は工業用塗料やプラスチックに使われる腐食性の刺激物、飲み込みや接触、吸入は有害で、これまでワクチンに使用されたことはなかった。ポリエチレングリコール(ALCー0159)はナノ脂質を作るのに使われるが、抗体を持つ多くの人にアレルギーを起こさせる可能性があった。その他、発ガン性、生殖毒性のある添加物が含まれるなど、確かにいきなり片目失明というようなツイートの理由がそれらにあるのではと思わせるような物質が含まれていた。これ、結果見て後出しではなく、そういうことになるだろうと思うから、知ってる人には打つな、と言ったんだよ。まあ、俺たちのいうことをちゃんと聞く人は、びいのお母さんくらいしかいなかったが。


 びいのお母さんは「わたしに死ねというの!」と叫んだ。あれはワクチンを打つ前日で、俺やびいが、嫌な予感がして聞いたら、明後日打ちに行くということで、慌てて資料を漁った。まさか接種券が送られてるなんて思わなかったからな。自分たちが大変すぎて、コロナのことは忘れていた。俺達、テレビ見ないから。


 で、メッセーンジャーRNAについて説明する大学教授の動画を探し、見せた。これね、引退してる先生しか、発信できないわけ。大学に関係してたら言えない。首切られたら困るからね。そんなわけで、ワクチンに反対している人は皆、自分の首をかけねばならなくなるから、そういう自由な立場の人が多いわけ。本当にまずいと思っている良心ある人の内部告発とか。


 推進派の顔を見ればわかるけど、怪しい顔つきになってない?これって、名誉毀損に当たるとか言われるから名指しとかしないよ、当たり前だけど。じっと顔を見ながら、意見をよく聞こう。偉い先生だとしても所属はどこ?出身大学はどこ?経済的に依拠してるのはどこ?団体には入ってる?


 若い野望に溢れた先生?それとも正義感?無知?いろいろな人のいろんな意見とそのバックグラウンドを見れば、見えてくるものがあるよ。その人がそう言うことにより、得しない?


 俺みたいにどこにも所属しない人生を選ぶのってさ、言いたいこと言えなくなるからと言うのはあるよね。その代わり、まあ言わば、霞を食って生きるみたいなことになるし、社会的地位とかそういうの、ない。それって信用にも関わるから、発言してもその発言は軽く扱われる。


 俺もびいも、自分が正しいと思うことをしたいし、正しくないことはしたくない。そうなると団体に属することって、具合悪いことが多く出てくる。自分たちの意向とは逆のことをしないといけなくなったら。俺達がこんなふうにどこにも属したくないのって、結局そういうこと。


 そもそも、ファイザーのコミナティ筋注の医療従事者用の説明書には劇薬だと書いてある。接種前の同意書でも、はっきり今現在わかっている事実がしっかり書いてある。むしろそこに真実が凝縮されているのは、後から知らなかった、政府や製薬会社に騙されたと後遺症や死者が出てから、補償を求める人達への対策だが、まともに読めばとんでも無いことが接種前同意書に書いてあるのに、皆きちんと読んでない。そもそも、同意せねばコロナで死ぬと洗脳に近い状態になってるせいで、接種しか生き残る選択肢がないと思いすぎている。日本ではデルタ株はともかく、これまでのコロナの死者は極端に少ない。デルタ株が増えたのは当たり前、ワクチン接種の人間が増えたせいなんじゃないのか。


 まああまり具合の悪い話をすると、潰そうとしてくる人間に粘着されて面倒だから、大きな声では言わないが、ごく普通にワクチンの歴史を調べれば誰でもわかる。面倒に巻き込まれたくないから、この回は非公開にするかもしれないな。こういう発言すると、すぐにハニトラメールがどこから知ったか携帯に入ってくるからな。脅迫でないだけマシだが、脅迫もあるからな。日本にいるからめんどくさい。今の所、一番安全なのは日本だから仕方ない。明日にでも消えそうな、吹けば飛ぶような「安全保障」だが。


 接種していきなり死ぬような注射、インフルエンザの副作用の死者は年間に一人二人しかいないが、半年ですでに900人以上、死んでるこのワクチンについて、それでも打つという人達が人口の半分程度いたことに俺は純粋に驚いていた。羊なの?馬鹿なの?


 医者の友人に言わせれば、それでもデメリットがメリットに勝るんだと言っていたが、俺はそんなこと全く聞いてなかった。接種して自分がすぐ死ねばワクチンの意味など全く無意味だからな。そういう人のことはどうでもいいから切り捨てるというわけで、まあ、接種を医院が進めれば一日17万円くらいもらえるらしいという噂を別ルートで聞いていたから、わざわざ気まずい思いを友人と共有する意味はなかった。友人は開業医ではないが、開業医もいる。喧嘩になるから、絶対に連絡すまい。向こうにとって俺のような存在は、何もしないくせに死ねやこらあ、という世界だからな。世界がひっくり返ったら、俺みたいな人たちばかり残って困るな。


 社会学で言えば、ハチやアリの世界と全く同じ。働きバチが死ねば、次はフラフラう遊んでたハチが働きバチにならざるを得ない。でないと巣が全滅するじゃん?社会というのはそういうふうに成り立つ。割合的に一定数のフラフラして身元があやふやなのが常に社会に存在するのは、アリもハチも人間の世界も同じなんだよ。そうでないと社会はうまく機能しないから。


 正直、この先、関節リューマチや全身エリマトーデスを発症するんじゃないか、とも思ったが、どこかの医者がそういう持病がある人は接種してはいけないと警鐘を鳴らしていた。仕組みからして、当たり前だろう。自己免疫疾患を誘発加速させる可能性があるからな。うっかりしたことを真実だと書くと問題になるが、ここは俺の日記であり、体裁はあくまで妄想小説となっているからな。よく似た条件の実在の人物から訴えられたら困るのでな。なーんだ、とここまで読んだ人はせめていいね! していくように。


 この医者の友人との会話が不毛だということは最初から知っていて、俺は深く話さなかった。いつも、いつ何時も、のんびりおっとりとしている友人が、ものすごいストレスを抱えていたのは目に見えてわかり、人生のうちで最も難しい時期を通過していることを見て取った。地下鉄の電車の中では、二人だけが浮き上がっているように見えた。まるで石を放り投げた池のように、周りに波紋が広がるのが見え、俺はうっかりしたことは言えないと感じていた。


 前に歯医者の受付で、後ろにいた年配、と言っても、そうだな50歳くらいだろうか、女性から「気分悪くなってきたので、やめてもらえませんか!」と切口上で言われたことを忘れない。すでに接種済みか親に接種された人なのかは知らないが。大したことを話していたわけでないのに、受付の顔見知りの人に、なぜワクチンが危険なのか簡単に説明していただけで。政府や製薬会社や医者がワクチンを推進してなぜ、どう得するのか。ごく簡単に推察できることを誰も全く考えてない、思いもよらない、と言うことの方が驚く。医療崩壊が起きている理由も、だ。


 友人の医者の声は上ずり、いつになく感情的で、もちろん自分も早い時期に接種したし、娘にも打たせたと言っていた。俺は絶句していたが、何も言えなかった。疑いを全く持ってなくて打ったわけじゃあるまいが、狼狽が激しかった。後からいろいろと気づいたらぞっとするだろう。確かに。だが、まあ、接種してしまったなら、デトックスするしかない。そんなことを言えばびいだって、書いたか忘れたが、肌に何箇所も、異常な腫れが出て、赤や黄色、黒に腕が変色していた。気づいた時にはそうなっていて、まさか稽古で?と、俺はs蛋白質の噂は本当だったのか?と写真に収めた。びいは接種してないが、周りの年配者はみんな接種してるからな。合気道の稽古相手も含め。


 ワクチン接種者が触ったからそうなったというよりも、外の稽古でタチの悪いブヨに刺されたのかもしれなかったが、たっぷりとワクチン接種者を刺した後の蚊だった可能性が高いのは、一週間前の稽古に参加した、あの若い女性が、同じことになったと、先生に苦情を言うように言っていたからだ。あれに懲りたのか、外の稽古にはあの娘は来ない。


 びいだけじゃないんだな……。


 俺はそこの場所が水が綺麗な水辺であることから、ブヨかと考えたが、それにしても、不気味だった。何日も腫れ上がったままで、写真に収めようと気づいたのは、すでに三日目経過くらいだったのかもしれなかった。びいはもうだから、合気道は辞めた方がいいと思う、とすごく言ってた。s蛋白質が汗や体液、接触で体内に入るというのが本当かどうか知らなくとも、人に寄れば、対峙した時に、なんとも言えない不快感がある、とびいは言っていた。異常な感覚が来る、と。


 何の匂いと言ってたか……ちょっと忘れたが、何か特有の、化学的な匂いがするというようなこと……


 びいが合気道を辞めたい理由は、多くのことが重なっているようだったが、もしも本当に後2年しか寿命がないのなら、そう気にする必要はない。そもそも、お前、死んでも良いんだろ?


 びいはそれはそうだけど……と言っていた。特に居合は死ぬ気でまっすぐ入るしかない。そのことについて、常に覚悟するということを意識していかないと、絶対にできない。それはとても良いことのように思えた。本気で生きるという意味で。


 俺もびいも軟弱だったが、もしも中学ぐらいに居合や剣術に出会ってたら、その後が全く違っただろう。多くの子ども達に伝えた方が良いのは「死ぬ気で今を精一杯生きる方が、結局は良い」ということだった。なぜなら、そうすることでずっと可能性が広がるし、自分を信頼できるようになる。そういう諦めに似た潔さで生きることで、もっと人生を深く大きく楽しむことができる。


 俺はこんなことを今更知るというのもな、と苦笑した。誰も教えてくれなかった。高い木に登り、高い場所から飛び降り、スピードの早い乗り物に乗り。なぜそういうことが楽しいのか、やっとわかった気がしていた。生きるというのは面白いことだと。河に飛び込み、海に潜り、空を飛び。


 できるだけ次世代に、自分達が得た情報を伝えたいと感じていた。 


 医者の友人はそもそも、打たないという選択は最初からなかったんだろう。それから、友人はワクチンに反対している医者はごく少数派だと言った。そうだろうな。ワクチンに反対すれば、アカデミックな場所、医師会、勤務先の病院、全部から追い出されることは想像に難くない。


 ワクチンはデメリットよりもメリットの方が大きいと友人は強調していたが、俺にはその言葉は虚しく響いた。社会生活というものの捉え方が、友人と俺では全く違う。俺は真剣に洞窟にこもって修行するべきかと考えるような人間で、この機会はちょうどいいと感じるほどだったからな。これで心置きなく世捨て人ができる。


 不食の実践は、食べないとダメらしいというところに落ち着きつつあったが、食べないということについて、俺はそこまでは他の人のような恐怖にとらわれることはない。まあいわば、飢え死にすることについて怖いと思うことはない。栄養の供給先をどこにするのかという問題であるだけだ。合気道する前は食べないと力が出ないことを知っているが、食べないからと言って、人はそう簡単には死なない。仮死状態のようなふうに持ち込めば。ごく普通の人が「食べないと死ぬ」と感じる恐怖というものが、ある一種の思い込みに近いと俺は知っていた。


 心頭滅却すれば火もまた涼しというが、心と体のコントロールの仕方について、俺はこの記録をつけ始めた当初よりもずっと、いろんなことを理解しつつあった。気を下に降ろすことがいかに大事なことか、世界と融合することがどれだけ大切か。そういうことを教えてくれたのは実はびいだ。


 不思議だが、わけがわからないような狂人みたいになり、泣いて泣いて追い詰められた人間を助けようとすることで、俺はそういったことを自然に学んだようだった。反面教師というやつ。ここまで落ち着かない精神状態のやつをどうやってこの世界に引き戻し、落ち着かせるのか。結局のところ、意識の焦点をどこに合わせるのかに全てかかっているということがわかってきた。


 俺は死ぬことはもう怖くない。死ぬことを怖いと思っている人を助けていると、逆に自分はもういつ死んでも良いのだという気がしてくる。だったらお前がコロナ患者を見ろや、と言われそうだな。


 びいは電話口で「びいのお母さんにワクチンを打たせろ」と言うおじさんに向かって「ワクチンのことを調べもせずに!」と叫んだ。


「何人死んだか知ってるの?」


 人間の命はパーセンテージじゃないのよ。たとえ0.001パーセントでも、自分が死ねば終わりの100パーセントなのよ!わたしにはわかる、打たせてはいけない!


 そう言うと、ブツッといきなりびいは電話を切った。ずっと世話になってきたおじさんに対して、びいがそんな態度を取るのは初めてに近く、前に逆らったのは、確か……よく知らんが、あのおじさんと喧嘩したのって、びいが小学生くらいに遡るんじゃないの?


 実のところ、今の段階で、厚生労働省の発表ではきっと1000人くらいの死者だ。ワクチンが始まり約半年。だが、報告しても報告書に記載をしてくれなかったケースをたくさん聞くから、実際はその10倍くらいあるんじゃないか。


 たまたま会った近所のお姉さんにちらりと言ったら、10倍どころでない、100倍と自分は見てると言っていて、俺は驚いた。出会う範囲で、反ワクチンの人に初めて会ったからな。俺はちょっとホッとした。このお姉さんは賢いな。何も自分で調べずにテレビだけ見ている人だけが、ワクチンを打てと言ってることは明白だ。放射能の時と同じく、調べて計測して、自分で検証している人達だけが、まずいんじゃないかと言っている。


 このお姉さんはパリに遊びに来たこともある。うちに泊まる時に、どこでもいいよ、床でもいいよ、と言うようなたくましい人だった。そしてびいが将来、プール付きの家に住めるようになりたいな、と言った時に、アジアには飲み水も飲めない子がいるのに贅沢な、と言ったのだ。確かにお姉さんは、井戸を掘りにアジアに行きそうな大学生だったが、びいにしてみれば、自宅にプールを持ってる人は身の回りにたくさんいて、ごく当たり前の話だったが、衝撃を受けていた。プールのある家に住みたいな、というようなごく単純な願望が「贅沢だ」と切られると思ってもみなかったのだろう。何よりも、お姉さんはごく近所の人だったからな。そこでびいは「贅沢」について思いを巡らせるきっかけになったのかもしれなかった。


 医者は製薬会社からもらう資料に頼っているため、全く気づいてない人が多すぎる。医者だからと言って、英文の論文を丹念に読む人などそういない。友人は留学経験があるが、まあ絶対に英文の最新論文などチェックする暇はない。俺は自分が文系だったことについてほぞを噛んでいるから、俺の運命は確実にもう変わった。他の世界線では、理転し、医者を目指す。父さんも兄貴も叔父貴も優秀だった。間に合わないということはない。幸い、入った高校は進学校、やる気さえあれば。


 今の俺は、前とは全く違った。生きることの意味を知らなかった前とは。

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