8月3日 合気道、柔道、拳法、少林寺、剣道と居合・剣術
すっかり飛び飛びになっているため、何を書いたか覚えてないが、俺たちはすでに近所の合気道の道場に通っていた。もうすぐ一年になる。
びいの鬱があまりにもひどく、泣いて何もできないために、リハビリで通わせることにした。が、なかなか難しかった。
いろんな混乱が巻き起こり、びいは「誰とも個人的には親しく付き合わないというのがモットーの場所では、人とどうおつきあいすればいいかわからない」と言った。そもそもびいは、とても明るく社交的で、ざっくばらんな面もあり、初めて会った人とでも簡単に意気投合してしまうようなところがあった。海外ならそれでちょうど良かったのが、日本に帰ってくると、あまりに排他的なのと、昔とはすっかり環境が変わってしまっていることに慣れないままでいた。
俺は間に入って何とかしようとしたが、「自分のことはあまり話したくない」今のびいは、この2年、まともな新しい人間関係を築くことはできなかった。びいは元々秘密主義的なところがあったが、自分の情報を極力言いたがらなかった。海外にそんなに長くいたこと、自分がアートに生きてきたこと。一切を言いたがらず、正体不明な人のままでいて、それでいて友人を作るなんていうのは、土台無理なことだったろう。
びいは昔から、自分のことを言うのを嫌がった。自分がどこの誰なのか。
子どもの頃から、名前を聞かれることに違和感を感じていた、とよく言った。いつどこで生まれ、何年生きたのか。そういった設定全てが、あやふやなものとしか思えない、と。幼い子どもがそんなことを主張し、与えられた名前が本当の名前かどうかわからない、名乗るのが嫌だ、と言ったとしたら。とても奇妙なことだが、俺はそのことも知ってて、前途多難だなあ、と感じていた。
わけのわからない人を受け入れてくれるほど、日本の社会は懐が広くない。だから海外に出たのに、帰って来ざるを得ない状況になった。まさかの事態が起こり。
俺は柔道、拳法、空手、少林寺、剣道については齧ったことがあった。びいも柔道と剣道は学校でやっている。剣道は部活で、柔道は学校の授業だった。びいはとても弱くて、柔道は「男の子と組むのは恥ずかしいので、女子だけの中にしてください」と女子を代表して柔道の先生に直談判に行き、最低の成績をつけられた。
投げ技はともかく、寝技が恥ずかしくて仕方ない、足を開くストレッチは恥ずかしいから内股で、というようなびいは、柔道嫌い、と言っていた。
パリで合気道の道場を開いている友人から、合気道をやらないかと誘われて出かけた時、錠を使った稽古のため、無理だなと。稽古が終わる時間も遅く、当時はとても無理と思ったが、今となっては本場の日本で習わない手はなかった。そもそも、出なきゃ日本に住む意味も全く見出せない環境にいたから。サムライ、忍者、富士山、芸者、寿司、天ぷら、刺身、神戸牛。
びいは牛肉、無理だけどね……。やはり何処かが悪いらしく、痛い痛いと痛がった。ソリッドの牛肉は消化できないらしい。311後は、念のため仔牛しか食ってなかった。
パリの8区の道場はかなりの人数、上級者ばかりで、とてもじゃないが一から初心者ができるスペースはなさそうだった。びいはそれですっかり諦めたが、そういえば欧州の小島にいた時、柔道の稽古に見学に行ったのは、他の武道がなかったからだ。
打突や蹴りがあるスポーツはびいは苦手。どっちかというとスポーツ全般が嫌いなびいは、合気道なら、と言った。俺はもうちょっとアグレッシブな武道じゃないと、くるくると相手をかわすばかりの合気道は、ちょっとフラストレーションだった。殴ったり蹴ったり、もうちょっとアクティブに反撃できるものがやりたかったが、びいが嫌がった。だから合気道。
ただ、それも居合、剣術の道場に行くと、すっかり認識が変わることになった。剣道と剣術は全く違う。剣の握り方から、送り足から、手首や体幹の使い方、全てが違った。剣道で持っていた疑問が、剣術を習えば氷解する。
俺もびいも、積年の呪いが解けたように急に我に返った。剣道はスポーツ。そして柔道も合気道も。
柔術、剣術とは根本が違う。合気道、合気柔術。合気道(術)や柔術をやって剣術をやれば、どういうことなのかよくわかる。
書いたかもしれないが、前世も今世も、他の人たちに比べ、俺達はずっとサバイバルな環境にいたために「とにかく強くならないと生き残れない」と考えていた。
それは強迫観念のように見えたかもしれないが、そんなことはない。アメリカにいた時も、ギャングに襲われ、スタンガンを所持することにした隣人がいたが、バス停はめちゃくちゃに破壊されていたし、びいも車から降りてきた数人の黒人に追いかけられ、財布を強奪未遂された。あの車ってキャデラックだったのか?
財布が滑って落ちなかったら、盗られてた。単に悪ふざけの若者の犯罪に近く、無理矢理に後追いされることがなかったが、ちょっと近所に出た明るい夕方に突然に犯罪に出会うなど、誰も予測しない。そのエリアは別に治安は悪くない。何より、大学のすぐ側で、そこの大学に通おうと思ったら、避けられないエリアなのだ。
フランスや小島でも同じだった。麻薬に銃声に、強奪に。フランスは比較的治安が良かろうが、基本的には変わらない。電車やメトロでいきなり前に座る人が、殴りかかってくる可能性は十分あり、逃げようがない場面はたくさんあった。それくらいのフラストレーションを人々は抱えている。あちこち殴りながら、暴言を吐きつつ車内をこちらに進んでくる奴がいる時、停車のタイミングで降車できれば誰だってするが、降車できない時、固まって座席の一部になるしかない。刺激したら何があるかわからない。
ただ、もし万が一本当に殴られるなどある瞬間には避け、相手の態勢を大きく崩さねばその後、どうなるかわからない。書けばきりがないが、ごく普通の生活の中に、そこまでの暴力が常にある。パッと見て、弱いと思われたら終わりの世界だ。
かといって、挑戦的な目つきで見たら、こっちにやってきてトラブルになる。非常事態に最も良いのは、さっと逃げおおせることに決まっているが、それはなかなか無理なことが多い。閉じ込められた空間だから、そこまでの密度で危険が迫る。イマドキは皆、密かにスマホで記録したり、他に通報したり、準備していても、目の前の麻薬常習者なんて、何するかわかったものじゃない。日本は平和そうに見えるが、貧しい国になれば全てが変わるだろう。不良外国人が流入し、すでに狼藉は始まっている。銅の水栓を売り飛ばしたのは、誰なのか知らないが、国が貧しくなる、外国人に乗っ取られていくというのはそういう治安の悪化とセットだ。
ちょうど本場の日本にいるし、護身術としての合気道を習おうとしていて俺達は、ここへきて、武道と武術は全く違うということについて、目から鱗が落ちた。
剣術の先生は、文字どおり真剣のような切れ味の体術を使い、俺達の今までは一体何だったんだ、と。その一瞬の、本物の動きを目にした瞬間に、スポーツ武道をいくらやっても、こんな身のこなしは絶対にできないことを知った。
ラフスケッチと完成画くらい、剣術の先生の身体能力と身体のコントロールの仕方は、他の追随を一切許さなかった。
鞘を抜く前から、放つ妖気のようなものは一切ないのに、気づいたら目にも留まらぬ早さで抜刀、斬られて転がされ、死んでいた。その技の完成度は後からの努力で何とかなるものでない気がした。
令和の時代になっても、侍SAMURAI(SAMOURAI)の末裔が生きていたことについて、俺もびいも、日本に帰ってきた意味はここにあったのかもしれないと思うほどだった。
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