物語の行方ーびいと俺とのこれまで

 そもそも、このお話は、俺が海外で一旗揚げてやる!と書き始めた日記だった。それが、パラレルの世界にスリップし、似たような現実を生きているびいという生身の女の子(と呼ぶにはちょっとアレなんだが)を、俺が助けてあげるしかない状態に落ち込んで、一年以上が過ぎた。俺の世界でのびいは、親戚のおばさんだったはずなのに、この世界では頼りなくて、年はともかく、とても若い。(付き合ってもいいくらい若い。苦笑)


 俺の身体は元の世界にあるから、元の世界が一体どうなってるのか、最初の頃は簡単に帰れると思ってたが、あまりにこっちに長くいるから、わからなくなってきた。別に俺、びいの守護霊じゃないし。


 「身体がない」ということで、すごい差別受けてきたが、まあ、本当はあるからいいよ。それで、女の身体を借りた感想だが、便利なのか便利じゃないのか、本当に微妙だった。俺が普通に話すと、びいの人間関係をことごとく壊すというのは、実際そうなり、何度繰り返してもピンとこない。


 良かった点? まあ、あんまりないね。夜中に自転車でウロウロしても、不審者には見えない、職質受けないくらいだろうか。後、夜道で女の子に会っても、相手はビクッとしない。びいの身体を使ってるから、怖くないんだろう。その逆に、男からは舐められるかもしれない。やたらと男が優しいから不気味だった。めちゃくちゃに甘い。本当に驚いた。俺には不要だよ。男に優しくされても気持ち悪いだけだ(苦笑)。


 びいに見え、実はそうでないから、気づかれた人から「出て行け!」と言われることがあまりに多いのと、俺にもこの状態はジレンマがある。自分がびいのために良かれと思って言ったり、行動することが、びいにとって良くない結果になることがあまりにも多い。俺はびいの振りをして、びいなら選ぶであろう選択をするべきなんだろうが、それはできないことが多かった。なぜなら、俺とびいは別人だし、びいが選びそうな選択を取ると「こんな選択するからお前、人生うまくいかないんだよ」ということになる。結局、お前、この現状を打開するには、お前のする選択を全て変えていかなきゃ変わらないよ。わかってる?


 正直良く考えたら、究極のゲームだよな。俺はゲームが嫌いだが、実際の身体を借りたゲームに参加している一年ということになってしまった。去年の4月か5月頃だから、実際は一年と、約半年?


 あまりに長過ぎて、驚愕だ。そして、海外から、今は日本にいる。こんなことになるとはな。せっかく海外に不動産を持ったのに、俺の世界の方は今、一体どうなってるのか知らないが、これまでの経緯、びいの世界と連動していたから、もしかして、パラレルの世界の俺も、今は日本にいるんだろうか?


 この長い年月の間に、こっちの世界の藤浪くんはラノベデビューだよ。そして、4年くらい前に、自主企画の中にいたメンツのもう一人もプロデビューしてる。いやはや、俺だけじゃねーか。何にも達成してないのは。このままグダグダのままなのか?


 I先生と久しぶりに話したら、喝を入れられた。先生と初めて話したのは、いつだ? 俺の世界では、3ー4年前になるのか。こっちの世界のI先生と、俺の世界のI先生はほぼ同じ人だった。


 もしかして俺の時間って、他の人よりも経つのが遅いのか?先生の考える一年と、俺の考える一年は、俺の時間の方がゆっくり流れてる気がした。不思議だった。

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