第370話 エロイプ


 俺は昨日、ぼんやりネットを見ていた。疲れてた。締め切りは1日、2日前に提出したが、まだ次の締め切りある。


 あまりに集中すると、他のことをして、ぼんやりしたくなる。


 


 誰か可愛い声の子いない?


 俺は、実は声フェチだった。どんな声が好きか絶対にバラさないです。


 滅多に出会いません。



 日本語を聞くだけできゅんきゅんするレベルになっている俺は、もう誰でもいいんじゃねーのか、実は、と苦笑した。


 俺、日本人の子がいいというより、日本語でセックスしたいです。


 セックスなしでいい、日本語で悶えて欲しいです。



 ……なんで敬語なんだよ。


 うさぎちゃんとエロチャットやりたいです、とか、馬鹿な想いで書き始めた日記は、トンデモナイ方向に進みつつあった。


 俺、結局、ブレてない、何も変わってない気がする。テーマ。



 



 ……エロイプだって。俺はしないぞ。



 検索しながら思った。電話でって……見えないからつまらな……あ、スカイプだから、見えるのか。



 でも俺は、禁欲してるから。は〜あ……。さっき「日本語だけでもいい」って言ったくせに。


 なんだろう、この修行。


 神原さんに言われるまで、俺、修行してる感覚なかった。なんなの、その修行、と言われたら、めちゃくちゃに当たってて、俺はぐ、っと黙った。そうだ、俺、修行中なんだった。


 禁欲のせいで、余計に増幅して煩悩にまみれた俺は、人のエロイプで癒されるとか、いや、アホだろ、と苦笑していた。



 滝に打たれるような修行も興味があり、実は調べたことがある。大学生の時だな。密教は技法だね。俺もちゃんともっと、そういう方向に進んでたらよかったのかな?


 そういや、日本で買った本、まだ読んでないや。忙しくて忘れてた。



 まあでも、トランスに入るのは簡単だから。あの世界はあの世界で戦いがすごいらしい。


 俺は、自分の力で金儲けとか考えないから、あまり関係ないね。この力は純粋に世界を理解するためだけに使われ、公共の福祉に役立つことが俺の存在意義だからね。


 そんな高尚な意義があるくせに「エロチャットしたいでっす」なんてお話を書き始めたのか?イエス、そうです。


 嘘。


 うさぎちゃんが可愛かったからです。すいません。



 ラノベになり得なかったのは、俺が真面目だから。俺の日記になった途端、読者が減りました。



 同じ感じで物語を書くこともできるのに、俺そんな、スカスカなラノベ書いてどうするの?と飽きちゃって。



 パターン一緒のような口当たりの良い物語とか、興味ないし。俺はそもそも、ドキュメンタリーにしか興味がないんだ。嘘のお話で一喜一憂とか、作者は神だろうが、結局人生の真実を、形を変えて伝えることにしか興味がない。その上で描く物語なら良いが、でないと意味ない。


 俺は冒険物やファンタジーも苦手だ。何より読んでこなかった。人の作り事の世界が嫌いだ。その中に入るのが嫌なんだよ。


 だから自分の世界の中を冒険することしかしない。自分の中だけで精一杯。





 変なものを降ろさないように、心を清浄に保たないとダメなのに、俺は何をしてるんだろうな。



 煩悩のにいるね。



 うーん。


 でもこれね、確か、先生のデッサン書く前の話だから。俺、バラバラに時系列過ごしてるから。


 この時の俺は、先生のデッサンまだ書いてない。






 どれどれ?



 親がいる前で聞くなよ!と最初に注意書き。



 ふんふん。



 好奇心。まあ、リサーチも必要だからね。バカバカしいが。





……



……




……





 俺は3秒もしないうちに恥ずかしくなり、切った。




 やべー、これ恥ずかしい。



 恥ずかしすぎて聞いてられん。



 親などいなくとも、こんな恥ずかしいもの聞いていられない!


 俺は顔を赤らめて怒った。



 俺のエロ描写もこの程度と思われてるかもしれんが、これは恥ずかしいわ。に、日本の将来が心配。


 第一線の外国にいて、国内の学生がこんなだと、もう日本滅びる……、と思ってしまう。




〜〜〜〜〜〜



 男の声: 僕ね、ごめんね、実は攻めとか苦手なんだけど、いい?



  女 : うん、いいよ。一緒に、ってこと?



 男の声: うん。そう。本当にごめんね?



 女 :  うん。



男の声 :リップ音とか、好き?



 女: うん。



男の声: じゃ、こんな感じで…… 0⭐︎=<%$#”S@C*♡


 女 : あ…… やばい、なにこれ、すごい……



 俺はシャットダウンした。



 は………恥ずかしくて聞いてられん……最初から最後まで………俺は、手のひらで口を押さえて、悶え死にした。キュン死にする。



 舌足らずすぎる。声。一歩行けば、馬鹿なの?に踏み込む一歩、いや、半歩、手前の声だ。



 ……可愛い。うーん、こういう可愛い声だと、あまり強引にはできない。確かに。



 こういう子に、「ダメだよ、やめて……」と言われたらどうするかなあ。


 俺は考えた。相手の年齢、セックスのキャリア、関係と立場と。


 全てを考慮して決めるなあ。


 できるだけヤラナイ方向の俺は、「そうだね、やめとこっか」と抱きしめてお茶を濁すか。



 そうなんだよなあ。セックスはリスク。妊娠と病気と、依存と。


 できるだけヤラナイに越したことはない。馬鹿みたいにクラブでひっかけまくった戦果を逐一、ネットで報告しているナンパ師とかいるが、馬鹿じゃねーのか。クラブにいるような女を釣っても仕方ない。入れ喰いに興味ない俺は、とにかく人数を誇るような男はアホだと思ってしまう。


 自分もそれなりのリスクを負うというのに。穢れた波長を身に纏うつもりか。



 そうそう、修行の意味がわかった。



 セックスというのは簡単にしてはいけない。波長。


 レベルの低い相手とやると、影響を受ける。相手が必ず上の波長の人とする方がいいに決まってる。もしくは同等レベル。



 俺がそんなに簡単にヤラナイ理由、触っただけで影響がお互いあるのに、セックスみたいな因縁が生まれることをすれば、後が大変だ。


 接続コードが繋がったままになりがちだ。



 俺は、何、エロイプの話題のはずが、いつの間にか、何、説教になってんの、と苦笑した。


 こんな頭悪そうなガキにはわかるまい。あ、あんまりこき下ろすと、やって来られてしまう。


 いや、リップ音すごいですね、はい。



 まあでも、こんなのは嫌、優しい方がいいと言われると、頭切り替える。


 それに本当に良いセックスというのは決してそういう強引なやつじゃないからな。単に今、俺が、そういう猛々しいエネルギーを持て余してるから、そうなってるだけで。


 あ〜、禁欲厳しい。彼女は……あんまり欲しくないんだなあ、これが。


 一回きりの女とかでいいんだな、やっぱりどう考えても、同じところに着地するね。後腐れのない、アバンチュールで良い、と思ってる。人間関係を構築したくないのかな。彼女とかいると、人生変えなきゃならないし。


 Bから「お前どしたの、最近すごい攻撃的」と言われる。


それは溜まっているからでしょう、と答えられない俺。可愛い女の子をギュッ、ギュッと抱きしめたいです、とか言えない。


 でも彼女は重い。知っている人の中からは選べない。知らない人なら誰でも良いわけでもないし、リスクが大きいからできるだけしたくはない。


 だからエロチャットなのか。納得だな。(自分で腑に落ちてどうする。)



 そういや、リップ音の前にこいつらが恥ずかしい会話してた!



 真面目に恥ずかしい……本当に、これは恥ずかしい。こんなものを公開できるというのが恥ずかしい。


このリップ音は、実はそうめんらしいが、恥ずかしい。



おまけにこの女、実は男らしい。



は………恥ずかしすぎて死ぬ。真面目に死にそう。




 俺はもう一度聞くとか、できない、無理、と電源を切った。



だいたい、「攻めできないけど、いい?」と聞いてから始める男が驚愕だ。



 俺は自分を振り返り、反省した。



 もしかして、俺、強引すぎるとか、相手のことちゃんと考えてないとか、一方的とか、そういうことになるの?


 俺はゾクゾクした。この男、ありえない。




なんというか、最初の段階で、「一緒に行くって感じなんだけど、いい?攻めとか苦手」



 もし俺が女なら、「じゃ、やめとこう?」って言うよ!


 馬鹿なのか、お前。



 は、恥ずかしいよ……俺、一番最初の初めての時は、強引でもなかったし普通だったけど、こんな会話はないわ!恥ずかしいぞ、お前。



 なんか恥ずかしい。何から何まで恥ずかしい。



 声からして、なよなよしたイメージが中学生かよ!



.........わかった、俺、同族嫌悪?????


キャ、キャラがなんか.......微妙にかぶるのか?



俺は今年からは、もう「頼りない系のキャラ」はすっかり脱却したいと思って。


俺は性格は決して、可愛くない。だけど一見、可愛い優しいタイプに見られる。


 どうしてもそれが嫌だ。クールで冷酷で理知的なキャラがいい。冷たい方がいい。目指してもなかなかなれない。ああいうのは、「性格」。親切で世話好きで素直でなんでも気にする方の俺は「感覚が女性的」と言われて、「可愛いね〜」といじられ、うっかり「照れ」を出して舐められることを繰り返す。


 舐められるの、嫌。



 俺はいつまでもリップ音が耳から離れず、時々思い出して、おかしくなった。


か、顔がにやける。



 俺がリップ音を思い出して、ニコニコしているとバレたら。



 真面目に恥ずかしい。本当に恥ずかしい。俺はJさんの奥さんとブロカントを回りながら、俺のこの笑顔がリップ音が耳について、離れないせいだ、とバレたらどうしようと真剣に考えていた。



 は、はずかしーわ!馬鹿なんじゃないか、お前らは!!



 俺は、こんな動画でドキドキさせられることについて、最終的になぜか怒っていた。


 いや、普通に、もし俺が女で、男からこんなセリフで迫られたら、俺なら、絶対に断る。





 なんなんだ、なんなんだ、それ。




 しかもこの可愛い声の相手の女、女と思いきや、こいつは実は男。ダメだ、我慢できない。



 か、完全に騙された……








 俺は同時に、したくなかったのに、結局感じて……っていう強引パターンが、ダメなのかと深く悩んだ。



 好きじゃないけど、体は感じるとか、したくなかったのに、俺が強引だから、乗せられたとか。



 いや、そんなふうに迫らないと、ドキドキしない気がするんだよなあ。相手も。付き合ってる彼女とかは違うよ。全く別の話。



 自分の中で、「まるきり別のもの」の感覚がある。彼女 VS. それ以外の女



セックスのパターンて、相手に寄るでしょう。使い分けない?



 俺は、俺のことを舐めている女が俺に嵌るというのが、好きなんだ。思わずして感じさせられたとか。俺、見かけが優しそうでどっちかというと、見かけはマゾみたい、こういう優しいタイプの男に見られがちだから。


 中身は違うんだよなあ。自分が上じゃないと嫌だと感じるから。



 お姉さんに「よしよし」とかされると、どんどん堕落しそうだ。Bにはそんな風に思われていて、「お前、羊が狼を目指しているだろう、結局のところ、お前は優しいから無理だ」と言われ、グッと言葉に詰まる。



 嫌だ俺は、冷酷で強引がいいんだ。冷たいのがいいんだ。



「岬くん〜かわいいね〜」


 と言われると、ゾッとするんだ。そういうポジションに位置付けられたら、とことん下僕系になる……



 俺はこのエロイプ、真面目に俺をストラグルに突き落とす、と最終的に怒っていた。俺は強引な方が好きだ。真面目でそんなこと簡単にしないような子に強引に迫って、嫌がって、結局、気持ちよくさせて、わけわからなくさせるのが好きなんだ。


 俺はどこの誰に怒っているのかわからなかったが、あまりにも気軽に、ノーテンキなセックスをしている中学生、お前ら、中学生だろ、そうだろ……にショックを受けていた。どうなってるんだ、日本は。



 なんでこんな、ふにゃふにゃな女みたいな男ばっかり、増殖してるんだ?



 俺は見かけは女みたいでも、中身は全く違うぞ。Bに「お前、その厳しい顔つきやめろよ、こっちまでトガる」と言われるくらいの緊張感に常に生きてるぞ。優しい顔をしていたら、即、捕食されるから。


 こっちの西洋人の男は、にこやかに握手を交わしながら、どこを突こうか、隙を狙ってるような男ばかりだぞ。ふにゃふにゃな日本人の男だと、ゲイの餌食になるだけだ。俺は中高生のVチューバーの動画を見ながら、こいつら終わってる、と呆れていた。



 日本の中で金稼いだって、先細る没落の国、早く気づかんか。


 俺はBから「お前、本当に、いちいち説教くさい」と言われていた。仕方ないだろ、俺はもともと「先生業」、人の前に立って、指導する立場しか、ほぼ経験ないのだから。そう思うと、俺の過去生って、なんだろう。反転か?



 これって性癖なのか考えた。俺は普通の子には強引でないと思うが、それにしても、この男はなんだ? 動物園のパンダのセックスじゃあるまいし。かわいいと言われながら、相手に主導権を取られるとか絶対嫌、と俺は、言葉攻めが苦手な奴、なんなんだそれ、とむくれていた。


もちろん俺は、彼女なんかに言葉攻めしないです。


 だから俺は、よく知らない人としかヤリたくないです。彼女とはごく普通の優しいセックスをしたい。



 俺は修行中で、長い間禁欲してるじゃないか。実は俺すごい。振り返るとすごいな。ものすごい真面目だ。誘惑さえされなければ、ちゃんと禁欲できる。



 俺は触られたら自動的に相手を叩くはたく。俺に触るな。


 ボディタッチが好きな女とか、最悪だ。俺は手加減しない。昔からこんな風なわけじゃなかったが、今一緒にいるのがBだろ?Bだったら、俺のテリトリーに入ってくる、イコール攻撃だから、容赦しない。



 たまに可愛い女の子を抱きしめて癒されたい思いが募る。やはりね、男と住むのはキツイわ。スペースを無駄に食うような、そういう対立の構図がある。これ、相手が女だと癒されるから、まるっきり反対のベクトル。


 だから、こんなふうに日記にくだらないこと、書き散らすところに来ちゃったんじゃないか!反動で。



 そもそも、知らない人ばかり選ぶのは無茶苦茶にリスクが高い。


 遊び慣れている女、プロは嫌となると、狭き門になる。人妻も嫌、頭弱そうな子も嫌、彼氏持ちも嫌、メンヘラも嫌。



 結局、すごい選り好みが激しい。昨日、Jさんに言われたが、「岬も彼女くらい作ればいいのに、なんで?」と笑われた。


遊べばいいのに。



Jさんねえ、自分はどうよ?結婚してるから遊んでないでしょうが。


俺は修行中なの、禁欲しないと堕落するから、禁欲しているの。



 とはいえ、男同士のエロイプのそうめんのリップ音に悶える俺、もうダメだ。これは禁欲期間が長すぎて、おかしくなってる証拠だ。



…… は、恥ずかしーわ!お前ら……



 俺がニコニコしているのを、Jさんの奥さんは、俺がブロカントを心から楽しんでいるせいだと思ってくれたことを願う。



 突然に耳に戻ってくる、あのリップ音、真面目に恥ずかしい。



 そうだ、ひとつ言っておく。


 彼女以外?


 彼女以外とするの?というツッコミ。



 いや、しないです、俺はしたくない、しないです。


 事故のように巻き込まれてしまったら、という意味です。


 俺は事故に遭いやすいんだよ。そういうこと。


 自分からそんな馬鹿なことしない。当たり前だ。











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