第313話 心臓がドキドキする


 俺は、何とかしてもっと仕事探すべき、と仕掛けを組んだ。

俺にできることって、何?


 俺ほんと、平たく、何にもに役立たないよな。爺さんの奴隷ぐらいしか。それもBがいるから何とかなっただけで。


 女の子を連れて歩いても、その女の子に「大丈夫ですか?」って言われるって、俺不覚。


 確かに年上だが、いやそれはいくら何でも。


 Jさんが「岬、お前何でガイドやらないの?資格あるんだろ?」と言った。ハイ、日本なら通用する資格ありますよ、Jさん。


 俺ね、やっぱり今の時勢、なるべく旅行やめとけよ、カモになる、と言いたいんだわ。実際そう言って、いろんな人間関係壊した。やっぱりね、自己責任に自信ない人は旅行しちゃダメだから。


 俺はガイドはやったよ。お嬢様を連れ歩く、とか。


 ものすごい綺麗な長身の女性だったな。でもね、何だろうね、俺、メトロで見送った彼女の顔、忘れないわ。


 黒いカシミアのストール巻いてて、ほとんど、初めてのヨーロッパひとり旅でさ。

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