第306話 女性は誰だ


 俺は、頭を押さえた。片手で。


この女性、俺じゃない。俺じゃないんだ。


俺は固まったようにその場に立ち尽くした。皿をテーブルに置いた。



俺だと思ってたが、俺じゃない。


俺は思い当たった。


……母さんか?



 そう言われたら、母さんにそっくりだ。もっともっと壊れやすそうな顔をしているが、母さんだ。


 俺はなあんだ、と息をついた。母さんなら。


 俺は不思議なことに、母さんだったら、まあなあ、と思ったのが不思議だった。どういうことなんだろう?



 俺、マザコンじゃないし。


 俺は、母さんなら自分で何とかするだろ、と思ったのと、突然にこの、気持ちが萎える感じに、俺、もしかして母さんを恨んでんのか?と思い当たった。


 何故だ?


 それは不思議だった。母さんのような人を恨む人はいないだろ。

 


 俺は思い当たった。いや、そういうことなのか。



 俺は突然に思い出した。Yさんのこと。Yさんと土曜日に気まずくなったこと。

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