第144話 Bの野望、俺の野望
何もかも順調なわけでなく、Bはものすごいストレスに晒され、俺に乱暴しそうなくらい荒れていることがよくあった。
俺は消耗していたが、日本に帰っても可能性がないと計算していた俺は、Bと一緒に物件を購入し、そこに手を入れてサロンやアトリエにする、新たな計画を立てた。ものすごく良い物件が見つかり、それはまるで中世にタイムスリップしたような瀟洒な内装の家のくせに、いろいろ難や悪条件で、びっくりするくらい格安の値段になっていた。
最初Bが見つけてきて、すごく興奮していたが、すぐに売れたらしくBはがっかりしていた。それからしばらくして、もう一度売りに出て、俺たちはすぐに、不動産屋に行って見せてもらうことになった。
俺もBも、驚いたが、まるで日本でいうところの異人館そのものだった。美術館レベル級のアンティークに、マニアな俺は興奮した。Bもそうだった。なんとかして手に入れよう、という話になった。
俺が購入の直前で、待ったをかけたのはたくさんの理由があった。
まず水回りがかなり怪しい。俺たちにはギリギリの予算で、そこから直すだけの余裕がない。俺は、値切らねば死ぬ、と思い、一旦降りようぜ、とBに言った。
諦めた方が賢明だ。正直、内装は古いため、そのままでは住めないぐらいのお化け屋敷。それはなんとかできても、水周りに電気、全て工事がいる。ガスのボイラーの交換。窓もダメだ。壁に穴。水漏れがいたるところすぎて、正直、どこから手をつけたらいいのかわからないくらいだ。
俺は冷静になり、ここに住みながら直すというのは大掛かりすぎて不可能。アパートに住みながら直すには、ローンがギチギチで、もちろん無理。ここは冷静に、一旦引いて、この工事分くらい値切って、それが無理ならもう諦めないと、命が縮まる。
俺は、良い、欲しいと思いながら、命と引き換えるわけにいかないと考えた。俺はまだ、あんまり調子が良くなかったし、何より、Bといると無理させられすぎる。この家は広くない。地下室を使えるように自分たちで工事するには、俺は粉塵の作業は苦手なので、コンクリの地下にある大きな謎の水槽?のようなものは壊すことができない。俺は、大掛かりな力仕事は自信がなかった。こっちの人は無茶苦茶する。それこそ家を壊しかねない勢いで、粉砕するようなことを平気でする。日本ではあまり見ない光景だが、力任せに、それこそ、建物自身を壊しかねない乱暴な重機を使ったりするのだ。ええっと、俺は、アメリカにいた時に、丸ごと家の引越しをしているのを見たことがあるが、漫画のようにポコンと家を大きなトラックに載せていた。まあ日本でもするかもしれないが、見たことはないな。
まあ、そういうわけで、俺は反対したが、Bがどうしても、と言って聞かない。俺が頭金を用意することになっていたから、ノーと言えば済むんだが、俺も最後のチャンスに賭けたかった。まあ買ってしまえば、なんとかなりそうだ。俺はセルフ・エンプロイドの立場になれる。俺を雇ってくれるところはそうそうないから、自分で何かするしかないのだ。よし、もう一回、なんとかやろう。俺は母さんに金を借り、この瀟洒な建物を直しながら、将来的にここを使って何かするべく頑張った。
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