第129話 日本イベントの入り口で


 ジョーが常にどこ、どっち?と前から聞いてきたが、俺にとっては、このエリアは庭なので、あっさりと会場に着いた。


 入場のところで、ジョーがクルッと振り返り、ごめん、入場料、1ユーロだって!



 俺は招待状あるんじゃないのかよ、と思いながら、5ユーロ札を出す。


 渡そうとすると、うさぎちゃんが払ってくれたらしい。


 え?旅行王子とジョーはちょっと微妙な表情でさっさと入っていく。


 ちょっと……あいつら女に出させるのか?


 俺は、いろいろ一瞬で思っていて、でもなあ、女に払わせるようなやつ、俺、この先付き合わないかもなあ、と急激に株が下がった旅行王子とのビジネスは無しだな、と瞬間的に思った。それはないぜ。会ったばかりのうさぎちゃんに金を出させるようなやつ、王子でないし、俺はお付き合いごめんだね。


 この人間関係は今日限りの可能性、とうさぎちゃんに、ごめん、これ、俺の分、と1ユーロ手渡した。


 俺、5ユーロ札を渡すべきだったか?


 ごめん、うさぎちゃんの顔が若干の比率分、小さければ何かが違ったのかもしれないが、俺はうさぎちゃんとも、会うことももうないなと思ってて。


 ア、アジア人の男ってこんなだっけ?


 俺はうさぎちゃんが俺にニッコリと、ありがとう、というのを見て、一瞬、ああ、あいつらの分も俺が払っとくべきか、と思ったが、結局、そのままになった。旅行王子、イケてねーやつ。


 だいたい俺は「日本イベント」のくせに、1ユーロとかセコい入場料取ることに、開いた口が塞がらない状態で、そこに居たんだ。


 俺は見なくともよくわかってるぞ、イベントの中身は。俺なら絶対にタダでも来やしない。時間の無駄に近いぞ。


 俺は中に入って、その予感的中に腹を立てていた。


 なんじゃこりゃ。イベントがセコすぎる。


 ほとんどよくわからない観客席のパイプ椅子で、会場の広さをごまかしてる。普通はな、このパイプ椅子のあるあたり、20か、多い時は30のブースがぎっしり入ってる。なめてんのか。


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