第63話 終わらない苦難
俺は、全て説明とかどうせできない、書くな、と自分に言い聞かせながら、また再び痛くなってきた左横腹を抑え、冷蔵庫に向かった。
もう夕方だ。また朝から書いて、結局、本当は、14時から出ないといけなかったのにパスしてしまった。明日にする。
不規則な食事や生活がダメなんです、といううさぎちゃんの声が響く。すいません、書いていたら忘れてました。
俺は朝、Bの弁当にしたタリアテッレのパスタを出してきた。大根おろしを作ってかける。冷たいままのものを食べるのがどんなに悪いか、これだけ懲りているのに、もう面倒でそのまま食べる。
ニンニクは刻んでかかっているので、スモークサーモンとアルファルファを載せ、レモンを絞り、醤油。
ん?
ゴミ箱の下が濡れている。
水?
俺はゴミ箱を退けて凍りついた。水、水、壁から水……。
昨日のYさんの言葉を思い出す。「それがさあ、なんかカビ臭いと思ったら、床が水浸しで、すごいカビてたのよ。工事にないとダメ、って。誰かさあ、いい業者いない?」
俺は凍りついた。これ……直すのまた、金かかるじゃん……
俺は、コンロの前に戻り、立ったまま、さっきのパスタを食べた。現実逃避気味。
キッチンの窓から、綺麗に咲いた鮮やかなゼラニウムの花が見える。
食べ終わるまで床は見ないで、でもまさか、吹き出すとかはないしな、と。
俺は、1ヶ月前に、庭から噴き出す水を流れ込んできてまずい、と汲み出した悪夢を思い出す。あれとは関係ない場所、限りない。
しばらく前は、地下室だ。地下室は最悪、実のところ、じゃぶじゃぶ長靴が濡れる。
B……どうするよ?
俺は電話しない。電話してもうるせえ、と言われるだけだ。Bなら見て、何か考えるだろ。
俺は母さんのことを考えた。珍しい。寝られなかった、と言っていた。どんな時も気丈なのに。
俺が馬鹿だから、もうどうすることもできないな……ほんと、まずいサイクルだ。俺は、実はさっき、もう一軒の医者に電話した。
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