第3話 俺に生まれる購買意欲。


 これって、女を買うのと、そう違わなくね?



俺は、あまりに「敷居が低い」ことに内心、正直驚いた。




 しかも、俺……


まさか女は、俺が未成年だとは気づいてないだろう。まあ、気付かれるわけがない。


 何度か、おばさんの名前を書き込んでくるから、俺は「違う、そうじゃなくて、俺は岬」と返事した。


 女は、失礼しました、と絵文字入りで返してきた。まあ、何も謝ることなんかない。俺が勝手におばさんのアカウントを使ってるわけで。


 あんまり突っ込まれると困る、と思ったら、女は何も聞いてこない。……よかった。


 これって、バレたらヤバいと俺が気づかなかったのって、ほんと、俺って馬鹿なのかもな。


 あとでこの会話、消しとけば見つからないだろうと、軽く考えてた。なんつーか、頭が回ってなかった。


 それより、まあ、当たり前なんだけど、他のことで頭が一杯で。


 看護婦だったら……男のアレとか、見慣れてるよな……手術前に剃刀で剃るのに、暴れて困った、とかよく聞く話。


 涼しい顔で剃られる男など、まずいないはずだ。感じるなというのが無理。


俺は、ナースの制服を思い浮かべ、なんかリアル…とブルッとした。


 俺にとって看護婦って、リアルそのもの。結構、看護婦はえっちと兄貴から聞いていた。まあうちの看護婦を、俺はそんな目で見ないけどさ。


 兄貴はあんな顔して、結構な……いや、優等生だが、裏は違うっていうか、まあ誰しも本音と建前があるし。そういうわけなのかどうなのか、俺は誰も信じない、父も母も、兄も。俺と兄貴…実はあんまり、似ていない。



 ナースは大胆。ナースにとって医者って存在は、まあね……


 うちは親父も医者、推して知るべし。医者はやりたい放題とかいう……わけじゃないが、正直、ある意味、そうかもな。女はとにかく権威に弱いから。


 父も兄も容姿端麗だから、惚れるなというのが無理だろう。実際うちの一族は美男美女ばかり。俺は、自分の容姿がコンプレックスだった。小さな頃は、よく女の子に間違われた。顔、姿形で、女が寄ってくる。俺はそういうチャラチャラした女が大嫌いだった。姿形で褒められると、中身なんてどうでもいいように聞こえる。実際、俺の中身を見てくれる人はいなかった。人から好かれたとしても、単に俺が美しい顔形をしているから、それぞれの理想を俺に投影しているだけだ。思ってたイメージと違う、と言われる度に俺はショックだった。


 母は美しい人だが、俺は、母親が嫌いだ。その理由はわからなかったが、俺の価値観と、俺の家の価値観は合わない。

表面的な美しさ、地位や権力、そういうものに惹かれてやってくる虫みたいなやつは鬱陶しいだけ。男が見かけだけ美しくても、得することはない。俺は、とにかく強くなりたいと考え、8歳から少林寺拳法の道場に通った。



 相手からは俺の顔が見えない。俺はだから興奮したのかもしれない。自分のことは一切伏せて、ただ、チャットでえっちに持って行きたい。もし、そうできたら、自分が本当に認められてる。無意識でそう考えたんだと思う、俺は女を口説き始めた。


 ありがたいことに、俺は嘘をつくまでもなく、女は俺のことについて、何も聞いてこなかった。


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