第2話 何でもいうこと聞く?うさぎ。

 ……ふーん。


クラウドソーシングサイトで、ふと俺の目に留まったのは、ウサギのように可愛い女だった。


「愚痴聞きます・なんでもあなたのお話聞きます」


……へえ〜。


3日間、あなたの彼女みたいになりきって喋ります、って……か。



…500円ねえ。


俺は、たったの500円で、なんでも話聞く、というサービスに釘付けになった。別に何かを話すつもりなどなかった。


確かに俺は今、崖っぷち。医者しか進路を許さない両親。もう勝手にすればいい、出来損ないのお前など勘当だ、と怒り狂ってた。実のところ、俺は途方に暮れていた。俺、医者になんて向いてないし、今のこの成績じゃハードル高すぎる。それに、俺には…他にやりたいことがあった。親は即座に打ち消したが。


おばさんが取りなしてくれたけど、留学だって誰がそんな金、出すんだよ……。非現実だよ。


思わずその女にメッセージを送った。


「かわいいね。プロフの写真、本人?」


女は、絵文字をたくさん散りばめて返事をすぐに返してきた。


「よく聞かれるんです、本人ですよ」


「アダルトとかも、オッケー?」


 俺は単刀直入に聞いた。なんかいろいろ、グダグダ話したくない。俺はただ、何にも考えず、ヤりたいだけ。



プロフの写真はめちゃめちゃかわいかった。そのかわいさって、なんだろう。


自己顕示欲がないような顔つきというか……。


何が一体、俺をいきなり、そんな「やりたいモード」のスイッチに入れたのかはわからなかった。


なんか不安そうな、怯えてるような目でこっち見てる。


うっかり触れたら、すぐに壊れてしまいそうな、繊細な薄いガラスのような感じで……


俺の中で、彼女はうさぎちゃんだった。寂しくなったら、死んでしまううさぎ。


なんつーか、登下校中に、不審者に話しかけられて、怯えてるちっちゃい子みたいだな……


俺は、よくわからないものの、人のログアカというのをすっかり忘れて、彼女に話しかけていた。




「えっちな話も、オッケーですよ。あんまりハードじゃなければ……」と、女は言った。


相変わらず絵文字入りで。さすが看護婦、肝が座ってるというか、しっかりしている。当たり前だが。


写真とのギャップがすごい。なんか気丈な感じがした。無理してないか?


 俺は、看護婦だという女と「したい」というそれ一点のみで、正直、課金するのに、人のアカウント使わなきゃいけないということを忘れ、交渉モードに入ってた。


さすがに全く課金しないのはルール違反だよな。かといって、ルーム開けちゃうと、おばさんにバレる。


どうするかな……。

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