夏の煌めき【12.スリを追って】

 チキンは巾着泥棒を追っていた。さっき祭りの雑踏の中で礼子れいこに人がぶつかった。その直後に彼女の巾着が消えていた。足元に落ちていなかったのだから、ぶつかったやつがスって行ったに違いなかった。彼女には運営本部に被害を伝えるように言い、彼は不審あやしい人物を1人で尾行していた。不審人物は祭り会場からどんどん離れて行く。

どこへ行くつもりだ? 彼は気づかれないようにあとを追った。


 一方その頃、礼子に呼び出されたクロシーは慌てていた。礼子が巾着をスられたのだ。スリ犯を追って行ったチキンからも連絡がない、という気がかりな情報も出た。ひとしと“礼子のエスコートはしっかりとする”と約束した上は、自分がしっかり付いているべきだったのだが……。

「分かった。礼子ちゃん。俺、チキン……橙川とがわを探して来る。10分経っても連絡して来なかったら、姐さん……賢木原さかきばらさんに事情を伝えて!」それだけ言うとクロシーは人波の中に駆け入った。

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