夏の煌めき【7.買い出し】

 それから2日後の夕方。静垣真王しずがきなおは廊下で知稀かずきと鉢合わせそうになった。

「おっと、ごめん。蜜柑坊みかんぼう

「あれ? 兄さんどこ行くんです?」

「あぁ。お前らユッスーにしごき倒されてる組があんまりにもあわれだから、今晩浜で花火でもしようか、って話になって。これから買い出し。……付いて来るか?」

「ああ。はい。もちろん。先生センセひとしさん、義子よしこさんにしごかれすぎて、読書感想文の文章すら思いつかないくらい脳味噌がうだってます」

 仁さんと義子さんというのは礼子れいこ兄姉きょうだいの名だ。

「よし、じゃあ、先に下行って待ってろ。俺はあと3、4人暇人探して来るから」

「あ。はい」


 約10分後。玄関前には真王、知稀、赤音崎あかねざきあやめめいの5人の姿があった。

「お前らいいか? 行くぞ。」号令をして真王は歩き出した。あとの4人も歩き出す。

「コンビニが近くて良かったっすね、兄さん」赤音崎が言う。

「分かり切ったことを言うなよ、ベルギー」と真王。

「そう言えば、何で赤音崎君のあだ名が“ベルギー”なの?」明が尋ねる。

「あ、私もずっと気になってました。何でですか?」菖も続けた。

「あぁ。こいつ、本名が赤音崎って言ってね、兄さんが赤く光り輝く……って連想したのが、オリオン座のベテルギウスって星だった、ってだけのこと」と知稀。

「そうそう。それで最初はベテルギウスって呼ばれてたのがベテルギーになり、いつの間にかベルギーになり……ってね!」と赤音崎。

 一行は角を曲がり、浜辺沿いの堤防道路に出た。ふと下の浜を見下ろすと華琉人はるとの姿があった。

「おい、華琉はる! 何やってんだ?」真王は呼びかけた「これから俺ら花火買い出しに行くけど、暇なら一緒に来るか?」

「おう。」返事をするなり華琉人は階段を駆け上がって来た。「行こうぜ! コンビニ」

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