夏の煌めき【4.昼食と班割】

 「さぁ~て、どうするか。」

一同は今回の目的地・汐海町しおみちょうにやって来ていた。そして昼食のBBQの班割りに悩まされていたのだ。

用意されているセットは3組分。男4、女3の7人1組に分かれることが一番合理的な選択なのだが……。

「ねぇ、悩むよか、じゃんけんしない?」とあきらがまっとうな提案をする。

「あ。それ、採用」真王なおが乗っかる。「でも待てよ。それなら俺と華琉はる賢木原さかきばらは抜けた方がいいな」

「何で?」状況を理解し損ねた華琉人はるとさやかが同時に聞き返す。

「バカ! シメに黒コゲの焼きそばを食いたいのか?」と真王。

「ヤダ~!」と一同が返す。

「よし、じゃあ、俺ら3人がじゃんけんから抜けるから……、男子チームが4・3・3、女子チームが3・3・2に割れるな。男子の4と賢木原を加えた女子の2の所が1班。あとの2班に俺か華琉が入る。……いいな?」真王の仕切りに一同が頷く。

「じゃあ、男女チーム別にな。せーの!」

グー・チョキ・パーで揃い! という掛け声の結果、女子チームは一発で決着したが、男子チームは2回も仕切り直した末にやっと決めることができた。


 今は各班とも順調に食材を胃の腑に片付けているところだった。

「なぁ、このあと、どうする?」〆の焼きそばの準備をしながら華琉人が言った。

「鉄板の上、片付いたら焼くぞ!」

「砂浜歩くとか?」と爽。こちらは既に焼きそばを作ろうとしている。

「せっかく海に来たんだし」

「真王は?」

「俺も賛成!」炒める音に負けじと声を張って真王は答えた。「でも女子チームがOKって言うか? 日焼けたがらないだろ」

「海は別件!」間髪を容れずに雛多が言う。

「夏なんだから海行きたい!」一見ひとみも続けて言う。

「ていうか泳ぎたい!」と水波みなみまで。

「あのさ、お前ら。俺たちはバカンスを過ごすために集まったんじゃねぇぞ!」とユッスー。

「分かってるだろうな? このイベントの目的は……」

「勉強合宿でしょ? 分かってるって」雛多は言った。

「でも、勉強ばっかしてたら脳味噌煮立っちゃうし」

「気分転換が大事だ、って言ったのは、ユッスー氏でしょ?」一見が援護射撃に出る。

「水着持ってきたからには泳ぎたい!」水波の意見は完全に個人的なだけである。

「お前ら本当に来学期成績上げる気あるのか?」呆れ顔でユッスーは“三人娘”に訊いた。“三人娘”はいたって真剣だ、という顔で頷く。

「本当だろうな? そこまで言うからには若干スパルタするぞ、覚悟しとけ!」

ユッスーの発言に反応して“四姉妹”の面々から「え~‼」というブーイングが上がる。

ヤバいと踏んだユッスーは「ウソウソ。なんちゃってぇ~。」とおどけてみせる。

「ところで“四姉妹”。そっちはどうなんだ?」焼きそばを盛り付けながら真王が尋ねた。

「うん。あたしたちも賛成」とはるか

「水波ちゃんじゃないけど、水着持ってきたからには泳ぎたい」耀ひかりも言う。

「あたしは読書感想文の気晴らしする場所を探したい」琴音ことねは言ったが、どこかいい子ちゃんぶった感じが拭えない。

「わたしは海風に当たりたい」とめい

「まぁ、いいんじゃない。合宿初日くらい、ちょっと遊んでも」聖が言う。

「そんな最初から息詰めてたら、最後までもたないよ。」

「そう言って泳ぎたいだけでしょ。実際」極めて珍しいことにながるがツッコんだ。

「うひゃひゃひゃひゃひゃ。バレた~。やべー‼ 海が荒れるぞ~‼」突拍子もない聖の一言に笑いの渦が巻き起こる。

この時、誰も合宿の脱線を予想してはいなかっただろう。

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