夏の煌めき

夏の煌めき【プロローグ】

 7月の青空から射殺すような陽光が降り注ぎ、灰色のシティジャングルを熱している。

街を包むうだるような熱気を伝って聞こえてくるのは、盛大な蝉の大合唱ばかりだ。

 人影もまばらな昼前の五星いつぼし駅前広場のロータリー向かいの木陰のベンチに、静垣真王しずがきなおの姿があった。

「あち~。」真王は被っていた野球帽を脱ぎ、汗を拭おうとリュックサックのサイドポケットからハンドタオルを取り出した。

 真王はこの場でいつものメンバー(便宜上彼がそう呼んでいるに過ぎないのだが)と待ち合わせをしている。

 いつものメンバーは基本的に3グループに分かれているため、おそらく同一グループの者同士が三々五々現れるに違いないと予想できた。

 第1のグループは、真王を筆頭として、海津見流わだつみながる桜桃晶司ゆすらうめしょうじ若狭聖わかさあきら光野華琉人ひかりのはるとの5人からなる『チーム静垣』だ。彼らは全員、小学校からの幼馴染でかれこれ11年の付き合いになる。

 第2のグループは、代表者の名前から『爽勇会そうゆうかい』と通称される、賢木原爽さかきばらさやか黒島勇くろしまゆうき赤音崎光輝あかねざきこうき紫村響しむらひびき橙川知稀とがわかずき青野恭平あおのきょうへい黄田魁こうだはじめ緑山夏也みどりやまなつやの8人組だ。彼らとは、中学時代に隣市となりまちのヤンキー高校の生徒とのケンカ騒ぎの際の貸し借りから交流が始まり、紆余曲折を経ていつものメンバーになった、という経緯いきさつがある。

 第3のグループは『女子チーム』と称される、女子の2グループ__桃園遙ももぞのはるか八神耀やがみひかり今村琴音いまむらことね志乃原明しのはらめいの“四姉妹”と、早坂雛多はやさかひなた白石一見しらいしひとみ森川水波もりかわみなみの“三人娘”__の集合体だ。

“四姉妹”とは、高校入学時に遙と耀が同級生になったという縁で知り合い、女友達の少なかった爽のよき友人となったことから自然と仲良くなった。一方の“三人娘”は、性格の似た雛多が爽に勝負を仕掛けているうちに、いつの間にか友人となっていた。

 チーム静垣は、“四姉妹”と“三人娘”という全く正反対のグループの合流に「代表者同士の抗争が起こる」と危惧したのだが、女子というのは不思議な生き物で、意外にもすんなりと打ち解けてしまい、彼らは拍子抜けしたのだった。

 夏の都市特有の熱いビル風が、真王の身体を掠めて吹き抜けて行った。

 そう言えば、あやめちゃんはいつ来るのかな? 真王は思った。

 菖ちゃんとは、真王の彼女の名前だ。五星市一円で超有名な私立聖フローレンス女学園の生徒で、安音寺あんのんじホールディングスの社長令嬢だ。

彼女との出会いは去年のクリスマス・イヴ。チーム静垣が繁華街の裏通りで、彼女がナンパされかけていたのをカツアゲされていると思い込んで助けたのがきっかけだった。

その後、正月明け頃に、菖の父親__つまり安音寺ホールディングス社長__から直々に礼があった、という次第だ。

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