チキン・オレンジの【7.独断行動はケガの素(もと)】

 そして、今日の夕刻。ながるたち3バカトリオは、夕庚北ゆうずつきた公園という名の商店街からやや西にある水神社の隣の公園に集まっていた。

「今日は殴りに行くんじゃない、謝りに行くんだ」流は言った。

「俺たちのダチが済まないことをした。このことはもう終わりにしよう、って」

「流、そんなこと考えついてたのか?」みどりんが言った。

「ごめん。俺、ずっとお前のことぼんくらの昼行燈ひるあんどんだと思ってた」

「ひどいな。おれだって、真王なおやユッスーに厳しくしごかれて8年。ちゃんと考える癖はついてるの! そっちみたいなガチガチの武官集団と一緒にしないでよ!」流は反論した。

「武官集団って……。殴り合いに強いのは、ねえさん、クロシー、赤音あかねちゃん、かいちゃんくらいですよ。あとはそんなの苦手で苦手で」と、チキン。

それに続けてみどりんが「むしろ兄さんのところのほうがそんなイメージ」と言った。

「うちが?」流は慌てて頭を横に振った。

「確かに華琉はるは、そういうところあるよ。でも、それだけだ。俺は弱いし、ユッスーは頭脳派で白兵戦は苦手だ。あきらは見た目強そうだけど、根っからの平和主義者だし、真王なんて、スタミナ不足が悩みの種だよ」

「まぁ、今回は、和平交渉ってわけだけど、そこは大丈夫なのか?」

「うん」みどりんの問いに流は頷いた。

「勝手な行動をして周囲に迷惑をかけるようなことをすると真王は怒るけど、良かれと思ってやったなら、大目に見てくれる」

「よし、なら、とっとと済ませよう」

 そうして3人は出かけて行った。


 流たちが河川敷でタコ殴りにされていたその頃。光野ひかりの家の電話口では、真王が電話応対の真っ最中だった。

「えっ⁉流が⁉……はい。すいません、ちょっと心当たりがないもので……。ええ。晶司しょうじくんたちに聞いてみます」真王は受話器を置いた。

「何だって?」華琉人はるとが尋ねた。

「流が帰ってないらしい。何か知らないかと訊かれて何も答えられなかった。これからユッスーに……」

「まさか、あいつ、五東いつとうに話つけに……」

「それかっ‼」

 真王は猛烈な勢いでユッスーの家電いえでんのダイヤルをプッシュした。

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