シアリアスナイト【8:夢から醒めて】
俺は目覚めた。今の今まで、ヤンキー化した3人からフルボッコにされる夢を見ていたらしい。全く嫌な夢だ。
そんなことより、
時刻を知るためにケータイを点けて
あれ? 俺、置いていかれた? 不安に駆られ、辺りを見回したその時。一条の光が俺の目を射た。眩しさに目を細める。すると光の位置が少し逸れる。
「おはよう、ユッスー。起こす手間が省けたな」真王だった。
「どうした? 幽霊でも見たような顔して」
「嫌な夢見た」俺は言った。「ヤンキーになったお前と
「定番だな、お前。変な所で寝落ちると」真王は笑う。
「そうだ、まだ皆寝てるから、起こしてくれ」
「分かったよ。それより、何で来た時点で起こしてくれなかったんだよ。目覚めてビックリしたじゃねぇか」俺は尋ねた。
「あぁ。お前ら3人、揃って気持ち良さそうに眠ってたから、起こすのが忍びなくて。ついでに俺らも眠っちまったし」
「はぁっ⁉ まさか女子チームも?」
「うん。そこで」
真王が照らした先に
「お前、サツに見つかったらどうするつもりだったんだよ」俺は問うた。
この展開、一番お前が嫌うやつだろ。
「この暗闇だろ? それにここは道路より下だし、あっちの方に
「パトから覗いたところで分かんねぇよ」
「それ、パトランプ点いてる前提か?」
真王は頷いた。
こいつの脳内でどんな計算式が立てられ、どのようなシュミレーションが行なわれたのだろう。それが知りたい。
「それはそうと、十分に休息も取れたはずだからそろそろ出発するぞ、って男子メンを起こしてくれ」
真王は女子チームを起こしにかかった。
俺はケータイを開ける。バックライトの瞬光でも、ないよりはマシだ。
2、3回の明滅の末、俺はすぐ隣に聖がいることに気がついた。
一瞬、さっきの悪夢の内容が頭を横切り、蹴飛ばして起こしてやろうかとも思ったが、それは止めにした。
「ほら、起きろ聖。華琉も」俺は2人まとめて起こしにかかる。「真王が出発するぞ、って。置いてかれたくないなら、早く起きろ」
ほらほら、とやっている最中に、俺は何かにつまずいた。
「イテテ……。ちょっと誰⁉ 人のこと蹴ったの」
「ごめん、聖。俺」と俺。
「ユッスー、気をつけてよ。ところで、今何時?」
「聞いて驚け。ただいま深夜2時30分過ぎ」
「はぁっ⁉」華琉人が飛び起きた。「真王は?」
「ここだ」と懐中電灯が向けられる。
「起きたか? 出発するぞ……って、華琉。お前、靴、どこにやった?」
「え……水たまりに
「下まで転がってた」
いつの間に起き出していたのか、
「はい。華琉の」
「どうも」
華琉人がスニーカーを履いたので、俺たちは堤防道路へと上がった。
「よし。お前ら喜べ」真王が言った。「端の方だけど、俺らの街には入った。あとちょっとだ。気合い入れて行くぞ」
「おう!」
再び俺たちは元気よく歩き出した。
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