シアリアスナイト【7:悪夢】

 物凄い音を立てて、俺は駐輪されている自転車の列に突っ込んだ。

「何すんだよ!」俺は叫んだ。

「叫んだって、誰も来ねぇよ。こんな没収チャリ置き場。生指の先公は説教してるし、該当生徒はその最中だ」

 この声は……。

光野ひかりの!」俺は言った。「お前、俺に何の恨みがある⁉」

「恨み何てねぇよ」華琉人はるとは言った。「ただ、これは何だっつってんだよ!」

 目の前に1枚の紙片が突き付けられる。それは、全科目学年1位であることを告げる俺の定試の成績表だった。

「何って、俺の成績……」

 表、という前に強烈なグーパンが飛んでくる。もろに喰らった俺は、もう一度自転車の上にひっくり返った。

 血の味がする。口の中のどこかが切れたらしい。

「そんな当たり前のこと訊いてんじゃねぇよ」聞き覚えのある声がした。

静垣しずがき……」

 その瞬間、俺は凍りついた。真王なおの目つきが違った。

 いつも仲間に向けるどこか見透かしたような目ではなかった。敵対者に向ける怒りと敵意に満ちた目だ。

 真王の細い脚が振り下ろされる。

「ぐっ……」蹴られて俺は呻いた。

「あのな、俺らが訊きてぇのは、こいつが冗談か、マジかってことだよ!」

「マジだ……」冗談でこんな成績、取れるはずがない。

またしても、真王の脚が降ってくる。

 息が詰まる。一体俺が何をしたって言うんだ、華琉はる……、真王……。

 誰かが俺のことを助け起こしてくれる。この手の感じ。間違いなく。

「な……がる」俺は彼の名前を呼んだ。

しかし、彼は返事をしない。

 その時、一本のすらりとした脚から繰り出された蹴りが腹に決まり、俺はガックリと膝をついた。

 ひゃひゃひゃひゃひゃと、あきらの高笑いが聞こえる。

ちくしょう。このヤンキーども、揃いも揃って調子づきやがって。

わか……」

そこが限界だった。次第に視界が霞み、音が遠のいていく。そして、俺の全てを完全なる暗黒が覆っていった……。

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