色褪せないで 【8:現実は甘くない】
……までは良かったものの。己のジンクスは、そう簡単に払拭できる訳ではなくて。
案の定、ヤンキーに絡まれてしまいました。幸い今回は、カツアゲされる前にヒカルの機転で脱出したものの、ショッピングモール内を逃げ回るハメに陥っていました。
「……ねぇ、チキン。動くなら今じゃない?」僕のTシャツの裾をつまみながら、ヒカルが呟きました。
「たぶんあいつら、もうこの辺りにはいないよ」
「だといいんですけど」僕は答えます。
「善は急げど急がば回れ、急いては事をし損ずる、って言いますからね。うっかり動くと見つかって……」
僕がそこまで言ったその時。
「いたぞ! そこだ!!」
さっき小競り合いを繰り広げたヤンキー一味の声がしました。
「ヤベッ!」
僕はヒカルの手を引いて、身を潜めていたトイレ脇の通路を飛び出しました。
「ヒカル」走りながら僕は伝えます。
「このままじゃやつらに追いつかれます。だから、ワンフロア下って、その階のインフォメーションに、『彼氏がヤンキーにタコ殴りにされてる』って言って、警備員を呼んでもらって下さい。僕はその間に、やつらをできるだけ引きつけておきますから」
「でも、チキン……」
不安そうに何か言おうとするヒカルを遮って、僕は言いました。
「僕は大丈夫です。さぁ、下りますよ!」
本当はいけないんですが、エスカレーターをドカドカと歩き下って下の階へ逃れました。
「ヒカル、あとは任せましたよ!」
「うん!」
ヒカルの後ろ姿を見送ると、僕は覚悟を決めました。
……よし、どっからでもかかってこい!
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