色褪せないで

色褪せないで 【プロローグ】

 空は青くて。申し分ない天気です。こんな日は、外で身体を動かすと気持ちいいんでしょうけど。僕は胸中複雑です。

……何で昨日あんな約束しちゃったんだろう。何で? 何で? 何で? 彼女いない歴=年齢のこの僕が? まだクロシーやかいちゃんなら分かるけど……

 ……あ。僕は橙川知稀とがわかずき五星いつぼし市の私立匙田さじた学園高校に通う2年生、16歳です。あだ名は、知稀の音読みから取られてチキン。まぁ、僕がビビリでヘタレなのも災いしてるんですが……。あ。ある人からは「蜜柑坊みかんぼう」って呼ばれてます。好きな色は名字にも入ってるオレンジ色。得意な科目は特になくて、苦手な科目は英語です。

 今、僕は夕庚北ゆうずつきた公園で人を待っています。その人のことは中学の頃からよく知っていて、高校でも同級生だけど……。

「チキ~~ン!」その人の声が聞こえてきました。

 ……あ……、来ちゃった。どうしよう……

「おっ、おっ、おっはよう、ヒッ……カル、ちゃん」

……噛んだぁっ! 声が上ずったぁっ‼ ……あ~、本当にどうしよう……

「おはよ。すぐ、チキンって分かったよ。偉大だね、そのマンダリンオレンジのTシャツ」そう言って、その人__宮崎みやざきヒカル__は、僕にとびっきりのスマイル。

……あぁ、そんな眩しい笑顔を僕に向けないで。朝陽を浴びたドラキュラみたいに燃え尽きちゃいそう。……

「ねぇ、チキン」

「ん?」

「今日は一日よろしくね」

「うっ……うん」

……落ち着け~、落ち着け僕!……

「はっ……初デート……、だもんね。思いっ切り、楽しもうよ」

この一言で、ヒカルはものすごく嬉しそうに微笑んで。

 …あぁ、今日一日、僕はどうなっちゃうんだろう……

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