第8部 情報収集
「さぁ行きますか。」
アキと別れ、町の大通りを見て回った。何人かプレーヤーと思わしき人間とすれ違った。そのほとんどの人間は凄く暗い顔をしている。
「ねぇお兄ちゃん。」
破棄のない声が聞こえ、後ろから服を引っ張られている。
「んっ」
後ろを振り向くと俺の腰辺り位の身長の女の子が俺の服を掴んでいた。
「お兄ちゃんプレーヤーでしょ。お願い私お金使ってないからお金ちょうだい。お腹凄く減っちゃたの。」
「……」
ちょっと待て、もしかして俺はまた俺は面倒ごとに巻き込まれるのか。
そう思ったが小さな女の子が上目遣いで本当に困った顔をしてるのを見るのは辛かった。
「はぉ」
溜め息を吐くと俺はアイタッチをだし女の子に俺の全財産の半分を渡した。……たいした額じゃないけど。
「ありがとう、お兄ちゃん優しいね。お礼にいいこと教えてあげる。」
「えっ」
「明日のお昼12時くらいに私達プレーヤーが始めに集まっていた広場に来て。何かしらのイベントがあるみたい。じゃあありがとねお兄ちゃん。」
そう言って女の子は手を振り、後ろを振り向き俺に背を向けて走っていった。
イベントかぁ内容がわからんからこれだけ伝えたらアキに文句いわれるかな。
そんなことを考えていると約束の時間の少し前になったので俺は酒場バッカスに向かった。
俺は、バッカスに入りテーブル席でアキを待っていた。とりあえずこの世界には生ビールが置いてあったのでそれを注文して飲みながらアキを待っている。
「待たせたわね。ちゃんと情報収集してきたの。すいませんハイボール1つ」
そう言ってアキは俺の対面に座った。
「ねぇこの料理美味しいの。これモンスターの肉でしょ。」
「まぁ騙されたと思って1つ食べてみれば普通に旨いから。」
そう言ってアキはその骨付き肉を1つ持ち食べてみた。
「うまっ」
「おーまたせしました。ハイボールです。」
肉を食べ初めてすぐにハイボールもきた。アキはすぐにハイボールを飲み始めた。
「んーー凄く合うわ美味しい。これスパイスが効いててハイボールと合いすぎ」
どこのグルメリポーターな台詞だよ。
「っで情報収集の結果は」
そう聞くとアキは飲むのを一旦やめて話してきた。
「今日ルーキーフォレストに挑戦したソロのプレーヤーがいたらしいの。その人はレベルが5あったらしいんだけどルーキーフォレストの入り口にゴブリンがいきなり10体近く襲ってきたみたいですぐ逃げ帰ってきたんだって。」
「まぁソロプレーヤーだったらゴブリンが複数体現れると厳しいかもな。」
そう言って俺はビールを飲み干した。
「すいませんビールお代わりください。」
「あと森には獣型のモンスターが多数存在してるみたいだけどそんなに強くないみたい。やっぱり問題は複数で戦ってくるゴブリンをどう対処するかね。」
確かに複数の敵と戦うとなるともう少し戦力を上げておきたい所ではある。
「っであんたはどうなの。」
「俺はとりあえずイベントの話を聞いてきた。明日の昼に俺達が召喚された広場でイベントが起こるらしい。」
そう言うとアキは目を細めた。
「ねぇその話ほんとなの私何人かプレーヤーと話してみたけどイベントの話は1つも聞いてないけど。」
「俺も一応プレーヤーって言っていた女の子から聞いた話だから、ホントかどうかまではわからん。」
アキは腕組をしながら考えていた。
「そうね確かにイベントとかあるなら危険かもしれないけど挑戦してみるのもいいかもね。」
「じゃあさ明日は朝はレベルあげ、昼の12時からイベントに参加しよう。」
「りょーかいそうしましょ。」
ハイボールを1口を飲むと少し悲しそうな顔をした。
「あと1つ私達みたいにすぐ行動できなかったプレーヤーなんだけど…」
確かに俺も少しこの環境に適応できない人間は少なからずいると思ってたし、小さな子供もちらほらいた。その子達がどうなったかは少し気になっていた。
「その顔を見るとそんないい扱いされてないみたいだな。」
「まず何人かはこの国の人間に捕まって奴隷になってるみたいなの。女性や子供がだいぶ狙われてたみたい。」
やっぱり奴隷とかもいるのか。
「そういう奴隷になりそうなプレーヤーの女性や子供を保護している人もいるみたいだけど……」
「保護してるんだったら問題はないんじゃないの。」
そう言ったらアキは首を横に振った。
「保護してるのは名目で装備品やお金を奪い取ったりする人間もいるみたい。女性を娼婦にしようとしたり、子供にお金を他の人にせびったりさせてお金を稼がせたりさせてるそうよ。」
俺は黙ってその話を聞いていた。アキが凄く悔しそうな顔をしているのを感じた。すると横から声が聞こえた。
「生ビールおまたせしました。」
ホント空気を読まないタイミングで来てくれたよこの店員……
「まぁ俺達の第一目標はこのゲームのクリアだろ。奴隷とか利用されてるプレーヤーのことばかり考えていると中途半端になるから。」
「そんなの分かってるから。」
アキは大声でそう言った後、ハイボールのグラスをもち中身を一気に飲み干した。
「ごめん先に帰るわ。明日朝の8時に宿の食堂に集合して朝ご飯食べてから出ましょ。」
そう言ってアキは酒場から足早に出ていった。
他人とはいえ奴隷にされてたり、利用しているプレーヤーがいると聞くと気持ちいいものではなかった。でも思ってたほど感情が剥き出しにならなかったし、冷静に話を聞けた。
「いつから俺は感情を表にだせなくなったんだろ。」
そんなことを口ずさみながらビールを飲み俺は更なる問題に気がついた。
「あいつまたお金払わずに帰りやがった。会計足りるかな。」
ビールを飲み終えて、お会計を済ませた後、俺の残金ほぼ底をつきかけていた。外に出て肌寒さがより一層感じた瞬間だった。
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