弟6部 パーティー結成
「あんたゲームが始まってすぐに広場を離れたでしょ。そんな行動をとったのが大体6,7人いたの。」
こいつあの状況でそんなとこみてたのかよ。
「あれだけ大人数の人がいたら、身動きもとりづらいと思って抜けたんでしょ。それに情報を真っ先に集めようと動いたんじゃないの。」
アキは腕を組ながら語っている。
「それにあんたの腰本に刀があるのが見えたの。私の武器は多分勘づいていると思うけどこの銃よ。」
そういうとマガジン式の銃を俺に見せてきた。
「それで俺が近距離で戦って、お前が遠距離で援護するってスタイルにしたいわけか。」
そういうとアキは思いっきり俺の鼻をつまんできた。
「いてててて、痛い痛い」
「私ね、お前って呼ばれるのすごく嫌なの。アキって名前があるんだからちゃんと名前で呼んでくれる。」
その時のアキの顔は満面の笑みを浮かべていたが目が笑っていなかった。俺は凄い恐怖を感じた。
「わかった、わかったから離してくれ。」
そういうとアキは俺の鼻から手を離した。
ってかこいつも俺のこと「あんた」って呼んでたからお互い様だろ。
「わかればよろしい。私もあんたのことコウヤって呼ぶから。」
「ハイハイ」
またこういうややこしいことに巻き込まれた。自分の運のなさがほんとに恨めしいと思う。
「じゃあ今から買い物に行きましょうか。お互い武器はアホ天使からもらったけど防具はないでしょ。それに回復系のアイテムとかもあるなら買わないとね。後はコウヤの髪も切りに行かないとね。」
やっぱりゲームの基本は掴んでるな。
「いや俺の髪はまた今度で……」
「ほらコウヤ早く行くわよ。」
「……はい」
結局俺、パーティー組むなんて一言も言ってないのに……
「買うもの決まってたけど、やっぱり買い物するためにブラブラするのは楽しいわよね♪しかも荷物はアイタッチに全部入れられるし。」
買い物と俺の髪を切り終え、今俺達はカフェでお茶をしている。
「不思議よね。ここはゲームの世界なのに、このコーヒーしっかりと美味しいと感じるわ。」
「まぁ脳に直接働きかけてるゲームっぽいからそういうリアリティーを追及した結果だろ。」
コーヒーをすすった凄くいい香りがしたし、味も申し分はない。
あのラーメン屋も案外期待できそうな気がしてきた。
「ちなみにこれからどうするんだよ。パーティーで動くなら2人ってのは少ないと思うし、せめて回復役や魔法が使える人員がいると思うぞ」
「まぁパーティーの補充はおいおいね。後2~3人位は欲しいんだけどね。とりあえず今からはフィールドに出てモンスターと戦闘してみましょうよ。」
「モンスターの情報がほとんどないのに大丈夫なのかよ。」
「抜かりはないわ。コウヤが防具を選んでる間に店の主人からフィールドの情報を聞いたから。」
ほんと、性格に難がなかったら凄く仕事のできるいい女なのに。
「あんた今凄く失礼なこと考えたでしょ。まぁいいわ、この街をでてすぐのところに草原のフィールドがあるらしいの。
そこには比較的大人しいモンスターが生息してるらしいんだけど、歩いて10分位の所に『ルーキーフォレスト』っていう森のフィールドがあるんだって。」
出たよダサい名前、今度は森か。
「その森には、有名所だとゴブリンや獣系のモンスターが生息してるらしくて、草原のフィールドと比べるとモンスターの格が1つも2つも上らしいの。
だからとりあえず草原のフィールドで狩りをしてみて戦闘に慣れてきたらルーキーフォレストに行ってみましょ。それにこの世界のお金の稼ぎ方も知らないと不味いでしょ。」
確かに今回の買い物で始めに持っていたお金の半分以上使ってしまった。さらに宿屋で2日分の宿泊費を前払いしてお金は底をつきかけている。ギルドみたいな仕事を斡旋してる所もあるみたいだけど戦闘に慣れからでも遅くはないと思う。
「りょーかい。じゃあ改めてよろしくな。」
そういうと俺は手を前に出した。
アキも手を前にだし握手をした。
「後これだけは約束して。どちらかが倒れて勝てないような敵と遭遇してたら、お互い見捨てて逃げることに専念しましょ。2人でゲームオーバーするより1人は生き残った方がいいでしょ。」
そういうアキの表情は少し寂しそうに見えた。
「わかったよ。そんときは容赦なく見捨てるから恨んで化けて出るなよ。」
「そっちこそ。じゃあ行きましょうか。ここの支払いはお願いね。」
そういうとアキはそそくさと席を立ち店をでていった。
「おいまてよ。」
慌てて俺が追いかけようとしたら
「お客さん、代金払ってもらえますか。」
凄くドスの効いた声をしたおっさんに言われた。
「すっすいませんでした。」
そういって俺は先程のチンピラのように謝り、なけなしのお金を店主に払い店を後にした。
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