ドーリィ 7
「パーキーパット計画の話は知っているね?」
私の問いかけに少年が頷くのを確認して、話を続けた。
「18年前まで行われていた政策で、計画で生まれた子供達は君と違い、完全に人工的に作られた。
計画中止になった理由は、大半の子供が精神に異常をきたしたからだと言われている。
原因は不明だがね。」
精神に異常を、という部分で少年の顔がまた不安そうに歪んだ。
私は出来るだけ穏やかな口調で言葉を紡ぐ。
「でも、キジマは現に警察になっている。
性格に問題はあるが精神に異常はない。
パーキーパットについての噂は数えきれないほどあるが、私はパーキーパットをキジマしか知らない。
だからそういった噂は信用しないし、君が人工受精だからとか犯罪者の子供だから犯罪者になるとも思わない。以上。」
少年はただ頷くだけだったが、多少は安心したように見える。
キジマは自分が引き合いに出されたことはあまり気にしていないようだ。
聞こえていないような顔で林檎を食べていた。
パーキーパットとは、大昔の小説で人形を表す言葉だそうだ。
そのネーミングが示すように、彼らには人権が認められていない。
もちろん社会的には保証されているのだが、おそらく私の想像出来ないほどにキジマは偏見や中傷にさらされてきたのだろう。
それを微塵も感じさせないのが、この青年の強さだと私は思う。
私は一つ嘘をついた。
私が知っているパーキーパットはキジマだけではない。
もう一人いる。
確かに、彼女は異常だ。
ただ、それは生まれのせいではない。
あれがああなったのは、確実に私のせいだからだ。
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