ドーリィ 6
「ねえ、あれシグマール三世でしょ?お兄さんもう狩ったの?あれなかなか会えないんだけど。」
「3回狩った。レベルカンストしてるからレア狩りくらいしか最近やることないんだよな。次のバージョンアップはいつだっけ、3月?」
少年は目を覚ましてからずっとキジマと意味不明の会話を続けていた。
私はというと、蚊帳の外といった感じでキジマが見舞いの品だと言って売店で買ってきた林檎を剥き続ける作業をしている。
正直なところ、私は子供が苦手なのでキジマがいてくれて助かった。
しかし話が長い、長い上に意味がわからないので私は退屈だ。
突然少年が私に向けて、「おじさん、バルバロッサ大佐に似てるね!」と言ってくる。
不意に話を振られて私は林檎を剥く手を止めた。
「マジだ!確かに似てる!アサヌマさん今度からバルバル大佐って呼んで良いですか?」
なんと答えて良いかわからずにキジマに目線を向けると、爆笑しながらそう聞いてきたので、キジマのつま先に踵を落とした。
しばらくキジマが悶絶している隙に私は少年に尋ねる。
「あのドーリィはどうやって手に入れたんだい?」
急に現実に引き戻されたことで少年は少し顔を沈めたが、インターネットだよ、と答えた。
一応彼が利用していたサイトを手帳に控えたが、売人の根っこを特定するのは困難だろう。
まあ、それは私の仕事ではない。
「どうしてあんなことをしていたんだ?さっきから話しているブレード…なんたらってゲームの真似がしたかったのかな?」
「別に…意味なんてないよ。退屈だっただけ。」
少年は私から目をそらしながらボソボソと答える。
「君は普通にマシンを使用しても実体化はしない、そうだね。」
「うん、したことは一度もないよ。僕は、あれだから…精子バンクで優秀な遺伝子を買って作った子どもだから、精神はもう大人なんだって。お兄さんも、そうなんでしょう?」
少年はキジマに顔を向けた。
キジマはしばらく足を抑えたままだったが、顔を上げてつまらなさそうに答える。
「いや、俺はパーキーパットだよ。」
少年は少し驚いた顔で固まっていたが、意を決したように尋ねた。
「僕の父親…つまりは提供者…すごい優秀な人だったらしいんだけど、この間…捕まったんだって。罪状は強姦と殺人。そういうのって…遺伝とか、するのかな。」
「遺伝しない。」
私はきっぱりと答えた。
「君が気にしているのは、おそらく世間でいわれている、いわゆる作られた子供が精神に異常をきたすというような噂だね。その噂に根拠は無いよ。」
少年は黙って頷いたが、不安そうな顔のままだ。
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