ドーリィ 4

死体はそれぞれ、頭が砕かれていたり、ナイフで刻まれていたり、様々な殺され方をしていた。

足で小突いてみると、実体がある。ただ、臭いはない。


レベル2の妄想か?


大きな斧で死体を殴打し続けている血まみれの少年がいた。

彼がマスダ家自慢の息子というわけだろう。


「イヤアアアアア!ユウ君、何っ…何を!」


いつの間にか上がってきていた母親が叫び声をあげた。


その悲鳴に振り返った少年が、瞬時に何かショットガンのような物を出した。

変にゴテゴテとしていて、普通のそれとは違って見える。

よく見れば、部屋に転がっているいくつかの凶器も、デザインが珍しい。

彼が自力で創造した類いのものならばレベル2ではない…?


今は考えている場合ではない。

少年が引き金を引いた。


私は咄嗟に母親を抱えて廊下に転がる。


ドンっ…!



重い銃声が響く。

直後、ズン…と何か巨大な物が倒れた音がする。


熊だ。


熊が倒れている。


いや、熊のような何かだ。


爪が異常に長く、何故か頭に王冠が乗っている。


少年は驚いた顔で熊を見つめて固まっている。


その隙に私は部屋へ飛び込んだ。

少年は私に向けてまた発砲したが、私はギリギリまで体を傾け、少年の足元へスライディングする。


少年はまた私に銃を向けたが、それより早く私の踵が少年の後方に置かれたマシーンに突き刺さった。




部屋中の死体と凶器が消え、少年はその場に倒れ込む。


「キジマ?!」


「俺は熊出しただけでそいつにはなにもしてませんよ。」


振り返ると、両手をひらひらと挙げて見せながらキジマは答えた。


少年は昏睡状態になっている。


部屋を見回すと、マシーンの近くに小さな空のビニールパッケージがいくつも落ちていた。


「救急車を呼んでこい!彼はドーリィを大量に服用している可能性がある!」



少年を抱えて立ち上がると、その体の軽さに、年相応にあどけない顔に、私は目眩を覚えた。

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