ドーリィ 3
扉には鍵がかかっていた。
「マスダさん、鍵はありますか?」
私が階下の母親に声をかけると、まだ興奮が覚めないのか、上ずった声が返ってくる。
「かっ鍵は…息子が持ったまま部屋に閉じこもってしまったん…です。それで、3日ほどあの調子で…呼び掛けても返ってくるのは大きな音だけで。だから仕方なく…通報したんです。」
そういうことだったのか。私はため息をついて告げる。
「では、破りますね。」
「破るって…あ、あなたたちはドーリィ使用許可があるんでしょう?鍵を…鍵を出してくださいよ、妄想で!」
とんだことを言い出す人だ。それが出来たら苦労はしない。
「残念ながら、鍵などの形が一つ一つ異なるような物は、見たことがあって形を完璧に覚えていない限り出せません。我々が今鍵を出してもこの扉には合いませんよ。そうじゃなかったら、どこの鍵も開け放題で大変です。マシーンがそんなに便利なものなら泥棒に転職していますよ。」
とは言ったものの、部屋はドリームルームなので扉は少し頑丈だ。
鍵部分を銃で壊して、などと考えていたら、キジマが中腰で鍵穴に工具を突っ込んでいた。
三秒ほどか、ガチリ、と重い音がして、鍵が開いた。
「 お前…そんな特技が…。」
私が少し呆気に取られていると、キジマは当然のように言った。
「ほっとくとアサヌマさん民家で発砲やら蹴りやら器物破損しまくりますから、こっちのが早いかなって。」
全くもってその通りなので言い返せない。
「…お前、泥棒に転職しろよ。」
私の呟きにキジマは声をあげて笑った。
階下から母親が怪訝そうな顔で見上げてきたので、気をとりなおしてドアノブに手をかける。
念のため、銃に手をかけたまま扉を開くと、そこには無数の死体があった。
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