アカガエル 2

蛙がキジマを捕らえたのだから、おそらくドリーマーにはこちらが見えている。

蛙の後方にいる場合、高い建物だろう。

低い場所だと蛙が死角になり、こちらは見えない。

蛙の前方、つまりこちら側にいる可能性は低い。

キジマがロケットランチャーを取り出した時点で巻き込まれる可能性があるので、蛙は何らかの動きをしていたはずだ。

巻き込まれる可能性があるこちら側にいたら、あれの飛んでいく方向次第でドリーマー自体が被害を被る。

つまり盾となる蛙の後方にドリーマーはいる。


キジマが私に向かって何やらまだ暴言を吐き続けていたが、私は蛙の足元に向かって走った。

蛙の目が私を見る。


蛙から二本目の舌が出てきて私に向かって伸びる。


オイオイオイオイ。

これはやばい、レベル3どころじゃないかもしれない。


私は死を覚悟した。


ばぐん


身構えたまま、上方を見上げて我が目を疑った。

目の前の蛙がでかい蛇に食われている。

キジマも食われたが多分まだ生きているらしい。

蛇の中からキジマの声が聞こえるからだ。


「アサヌマさんパネぇっす!でも俺も食われちゃってるんでえ、なんとかしてくれませんかねええ?」


蛇を出したのはもちろん私ではない。

私はマシーンすら装着していない。


まあいい。

蛇はこちらを見ていない。

蛇の後ろをすり抜けて四方を見渡した。


こちらを見ることができる建物、蛙からキジマが死角にならないビルは百貨店と雑居ビル、二つある。


どっちだ?

二つを見て回る時間はとてもない。


人目につかないのは雑居ビルだが入り込みやすいのは百貨店だ。

雑居ビルの場合、高い階からこちらを見るにはいずれかのテナントに入る必要がある。

事前から関係者以外が入っていた場合、不審がられる可能性も高い。


私は百貨店に駆け込んだ。


入り口に入ってすぐ、エレベーターが稼働しているのが見えた。

表示は五階で止まる。

五階はペットショップだ。


爬虫類、両生類フェア開催中の文字が目に留まる。


罠だろうがなんだろうが行ってやる。


ご丁寧に移動していた隣のエレベーターが一階まで到着して扉が開いた。


まだ私はギリギリ中年になる前だというのに、親切なことだ。


「はっ。おっさんの体力舐めるなよ。」


誰もいない百貨店のフロアに吐き捨てると、口を開いたエレベーターを無視して非常階段で五階まで駆け上がった。

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