アカガエル

目の前にはどデカい赤い蛙がいる。


蛙は特に何も考えていないようだが、だらしなく伸ばした舌の先にキジマが巻かれている。

あれにあのまま食われたらキジマは死ぬだろうか、多分死ぬんだろう。

キジマは叫んでいる。


「アサヌマさん!!やべーっス!てかマジヤバイんでアサヌマさんも《ドーリィ》キメて、こいつなんとかできる武器とか出してくださいよ!」


私は蛙の脳天に向かって拳銃を構えた。

タン、タンタン。

軽い音が三発。

命中したが反応はなし。

確かにレベル3だ。


「なにやってるんですか!レベル3には妄想でしか対抗できませんってば!!」


私はキジマに伝える。


「対象マシーン探して破壊してくるから、ちょっと待ってろ。」


「は?おい、ちょっと待てやアサヌマぁぁぁ!」


部下の暴言は聞こえなかったことにして私は走り出した。


***


現場に到着した時、そこには五メートルほどの赤い蛙がいた。

ノソノソと歩くと、蛙の足元の車がひしゃげる。

実体があるということだ。


ドリーマーの位置はわからない。

これだけのものが実体のまま動いてるんだから、近くにはいるのだろうが。


ゴウッ


突然、爆風が私の横を抜けた。

振り返るとキジマが蛙に向かってロケットランチャーをぶっ放したようだ。

そんな武器はもちろん常備していない。

キジマが“妄想して”出したのだ。



「そんなもの出すな、街に被害が出る。」


「大丈夫ですよおおお、あのガマ公にだけ当てればいいんでしょおお!」


ドーリィを服用しているためキジマの目の焦点はヤバい。

多分私の話は聞き入れないだろう、早くドリーマーを確保しなければ。


「あれはガマじゃなくて、アマガエルだ。」


「どっちでもいいですよう、蛙は蛙じゃないっすかあ」


私のどうでもいい訂正を無視して、キジマは叫びながら蛙へと距離を縮める。


「待て、不用意に近づくな。」


キジマは聞かない。


「こういうのは口の中にぶっぱなせば死にますよ!俺ゲームでやったことあるんでええ!


…あ。」


蛙の舌がだらりと伸びてキジマを捕らえた。

というのが今の状態だ。


普通の蛙なら捕らえた瞬間に食っているはずだが、キジマはだらしなく伸びた舌にぶらさがっている。


このドリーマーは蛙をよく知らないのかもしれない。

しかし、知らないにしても緩慢すぎる。

悪意あるドーリィ使用者ではなく、子供だろうか。

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