アサヌマ 4

食事を終えた少し後、またモニターに顔が映る。

今度はブルドッグではなかった。

モニターに映った若い男の顔は百人中百人が美男子と答えるだろう端正な顔立ちをしている。

私は彼の顔を一瞥して、また書類に目を落としながら尋ねた。


「キジマ、どうした?」


私の無愛想な問いかけを気にもとめずに、キジマは軽薄そうな笑顔を浮かべて私に語りかけてくる。


「アサヌマさん、出動だそーでーす。」


今日の昼休みは実質10分くらいか。

飯を食えただけマシだなと思いながら私は答えた。


「お前、飯は?」


「まだでーす、んでぇ、何か途中で奢ってください!」


何の遠慮もなく笑顔のままで答える部下に私はため息をつく。


「私が運転するから車で食べろ。持っていってやるから。」


「アサヌマさんの愛妻弁当ですか?なんか申し訳ないなー」


何故私の昼飯をこいつに分けること前提になるのだろう。


「私はもう食べたよ、そして残念ながら愛妻弁当はここ何年も食べていない。」


モニターの中のキジマにパンの空袋を見せながら席を立つ。


キジマはパンじゃなくて米がいいとかやっぱりラーメンが食べたいとか騒いでいたが、私はモニターの電源を落とした。


「レベル3ねえ、ガキかドーリィかどっちっすかねえ。」


助手席で携帯型マシーンをガチャガチャいじりながら、キジマが嬉しそうに言う。


「また実戦でドーリィキメられますねえ、楽しみだなあああ。」


私は答えない。


「アサヌマさんもマシン壊すばっかじゃなくてドーリィ使ってくださいよー。アサヌマさんはなんたってあのドリーム戦争の…」


「私は使わないよ」


私はキジマの言葉を遮った。


私はもう使わない。

ドーリィも、マシーンも。

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