アサヌマ

幼い頃、漠然とした不安に苛まれることがあった。

私が見ている世界はすべて私自身が作り出した妄想なのではないかという不安である。


私が誰かと話していても実際にそんな人間は存在せず、私は一人で話していて、本物の世界の連中が私を冷ややかに、あるいは憐れんで見つめているのではないか。

そう考え出すと恐ろしく、そして悲しくてたまらなくなった。

もし私の世界のすべてが私の妄想であるなら、本物の世界の私にはどうか目覚めないで欲しいと願った。


だが今では、そう、あの日からずっと、こんな世界は妄想であってほしいと心から願っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る