22話『憎い』
目が覚めるとそこは、知らない場所でしたが、分かることは、ここが廃工場の様な場所であるという事と、私は、椅子に拘束されている。
そして極めつけは目の前には黒髪ロングヘヤーで憎たらしいほどオッパイの大きい女の子……伸介たちが、ジャンヌと言っていた少女は、この廃工場とは、無縁な黒いドレスを纏っていました。
「目覚めた?ミソギチサト?」
「なんですか?ちゃんと喋れるじゃないですか?初めて会った時のキャラは演技ですか?」
正直、人生で一番怖い体験をしています。しかし、ここで挫けてしまっては、相手の思うつぼだと思い、演技でもいいので気丈にふるまった。
「そりゃこの世界の人間の魂を食らったら、バグにだって、まともなコミュニケーションをとることくらいできる」
「こ……殺したのですか?」
怖い。
私は、殺されるのかもしれないです。そう考えると、声が震えているのが自分でもわかってしまった。それに気が付いたのか、影ジャンヌは、不快な笑みを浮かべ私の頬を舌で舐めてくる。
「大丈夫。貴方は、簡単に食べたりしないから、怯えないでいいのよ」
「不快です。やめてください」
「あははは!不快不愉快最高ね!私にもっと罵詈雑言を言ってもいいのよ!」
影ジャンヌは、自分が会話はできるようになったと言っていましたが、思考は、なんというか理解はできませんでした。
「目的は……」
「そんなの、一つ。エリーゼとシンスケを殺す。そのためにあなたの体を借りる」
「借りるって……バカですか?それに、シンスケやエリーゼを殺してあなたに何の得があるのですか?」
分からなかった。ただ、自分の繁栄の為だけにエリーゼ達を殺すなんて、あまりに効率の悪いものであった。繁栄をするなら、そもそもかかわらなければいいのでは……
「私は、ミソギチサト、あんたが嫌い。だって、そうやって本心を隠しながら、私の本心を探ろうとするその態度が……だから、ご褒美に教えてあげる」
「ご褒美ですか」
「ええ、本心を言ってしまえば、憎い。私を殺したエリーゼが、私がいないのに、目的だけ果たして、さっさと元の世界に戻ったシンスケが憎い。だから殺す」
憎いから……それだけのためにこの子が動いていたのかと思うと少し怖く感じてしまう。短絡的な思考もそうであるが、本気の表情に私は、恐怖を覚える。
「憎いから殺すのは、いささか、考えが足らないのではなにでしょうか?」
「いいえ、バグは、本能でしか本来動けない。それは、私も同じ。どれだけ喋れて、考えられても私の本能は、憎しみと憎悪。人が生きるために生き物を食べるように、私は、憎む生きるために。それは決して間違えていないと思うわ。だって、しょうがないじゃない憎いのだから」
「……わかりません。生きるために憎むなんて」
「関係ない。貴方は、今から、私の憎しみのために使われる道具なのだから」
そう言うと影ジャンヌの姿が、霞み、黒い霧のような姿になる。
『大丈夫。シンスケたちが死ぬまでは、貴方は生きている。だって、あなたの体は私が使うのだから』
「な……何を言っているのですか?嫌です。私は、絶対にあなたに協力なんて……」
『大丈夫、勝手に使うから』
そう言うと私の口の中に黒い霧が入ってくる。
「あが!」
苦しい!おかしい。私の体に、何かが流れてくる。心の底の闇を彼女が体験した苦しい体験を……いやだ。憎いなんて思いたくない。
その一心で私は、苦しみに耐えようとするが黒い霧は、あざ笑うかのように陽気な声で話しかけてくる。
『むだ!だって、今から私は、貴方になるのだから、抵抗しない方が楽。ショック死しないで済むわ。まあ、殺さないけど』
「うるさ……いです」
黒い感情は、私に見たことのない情景を見せる。
焼かれていく中世の世界にありそうな田舎の村。魔族に食べられている同じくらいの身長の少女で、まだ息があるが、その瞳は、自分の犠牲により生き残っている私を呪うような瞳に涙。しかし魔族の捕食は続き、次第にその目は、物理的に消え、視線も消えたが、また新しい視線。
生きている私を憎い言わんばかりの視線。そんなことが何度も続いていた。無力と感じる少女は、そのまま協会に預けられた。
次に見たのは、教会で、一心不乱に殺すための技術を学ぶ少女。本来少女の性格は、殺すということを嫌ったが、そんな少女を突き動かしたのは、人を救うという感情より憎悪の方が大きかった。そんな、彼女がであったのは、純粋に人を救うために戦う良く見知った少年であった。
自分の愚かさに最初は、劣等感を感じていたが、少年は、そんな私に手を差し伸べてくれ、気が付くと憎しみは、忘れていた。
最後の情景は、親友と恋人が殺し合っている光景だった。私は、初めて、憎いと思っていた相手と戦うことに戸惑っていた。しかし、見知った友人たちは、少女と同じ感情を持ちながら殺し合う。最後の最後、恋人が、親友を追い詰め終焉が見えた瞬間、私は、親友の部下が毒矢で、恋人を攻撃しようとしていた。動けなかった私の体が、本能で動き、恋人の代わりに攻撃を受けた。
そうして、気が付くと恋人と親友は、私により何かを喋っていたが、もう耳も聞こえなくなっていた。しかし、最後に少女の脳裏に残ったのは、よか……『憎しみ』と言う感情だった。
憎い憎い憎い。感情が彷彿する。そして私の残った最後の感情は、憎いというものだった。
「たすけ……て、伸介……エリ……」
こうして、私は、肉体から、意識を手放した。
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