13話『親友キャラ?』

いつものホームルーム。変わらないクラスだが、欠席が多くどこか寂しい。

「はーい、皆さん……げふ!いいですかゴホ……風邪には、気を付けてください。じゃないと……ゴホゴホ!楽しい学園生活が台無しですよ……ハクッション!ホームルーム終了です!」

飯塚先生は、本日のお前が言うなスレが立つ勢いの風邪をひいており、完全にブーメランになっていた。

「シンスケ?どうしたのよ。いつもよりも辛気臭い顔になっているわよ」

「うるさいぞ。エリーゼは、嫌味を言いながらじゃないと俺に話しかけられないのか」

 いつも通りの鋭い嫌味が腹立つ、金髪女は、授業前の時間に話しかけて来た

「すみませんでしでごいますですわ、おほほほ……って話しかけてもいいならそうするけれど」

「気持ち悪いな」

「でしょ」

ふざけた様に笑うエリーゼ。三人で遊んだ休日以降、これと言った進展はなかったものの、今まで見たいにいがみ合うだけでなく、冗談でお互いが笑えるくらいにはなっていた。

「あ……あの、先輩方。最近どうしたんッスか?急に仲良くなってしまって」

伊織は、少し引き気味な表情で、俺達を見てくる。笑い合うようにはなったが、決して仲がいいわけではない気がする。

「はあ、イオリ君の目は節穴?私とシンスケ仲がいいなんてどうやればそう見えるのかしら?」

「いや!絶対仲良くなっているじゃないっスか!前は、お互い喧嘩するだけだったのに休み明けからは、挨拶もしっかりしていますし……」

「伊織、お前の目は節穴だ。俺が、エリーゼと仲がいい訳がないだろう。な、エリーゼ」

「ええ、常識よね」

俺の意見と同じなのか同調してくれるエリーゼなのだが、その光景を見て、怯えているようにも見える伊織がいた。

「いやいや!いや!待ってください!口を開けば、痴話喧嘩、マンネリ夫婦漫才と言われた姿が一切見えないんですが!」

「さて、変な噂を流した輩を殺しに行こう、シンスケ」

「そうだな。殺そう。そんな奴ら、元々目が節穴なのだから抉ってしまってもいいだろう」

「先輩方物騒ですよ!?息が合い過ぎです!」

……物騒と言われ、俺達は、目を合わせる。確かに最近、妙に息があっているような気はしていたが、俺達は、信じたくなかったのだが、伊織からそう言われてしまうと、認めないといけなくなってしまう。

しかし、それを認めると恥ずかしく感じてしまう。

「な……なによ?そんなに、じっと見つめないでよ……」

それは、エリーゼも同じなのか、顔を赤くしていた。俺は、自分が、エリーゼを見つめていたかと思うと反射的に顔を背けてしまった。

「う……うるさい。見つめてなんかない」

「そ……そう」

「いやだ!先輩方からラブコメの波動を感じるだなんて怖すぎッス!」

「「ラブコメなんてしてないわ!」」

伊織へのツッコミが重なる俺達は、自分たちが息の合っていたことに気が付き、周りを見ると、クラス連中の何か恐ろしいものでも見たような視線が俺たちの方を向いていた。

「……この、ば……バカシンスケ!死ね!バーカ!バーカ!」

「馬鹿じゃない!このバカエリーゼ!」

「はぁ……先輩方、お幸せにッス」

呆れたように俺たちを見る伊織は、いつになく呆れたような態度であった。あまりの恥ずかしさに俺は、強引に自分の都合の悪い話題から方向転換しようと試みる。

「そ……そういえば、伊織?!最近、学校を休むやつ多くないか?」

「篠崎センパイ……話題の転換の仕方が強引ですよ……まあ、不思議大好きな俺も気になっていたんスよ。先輩に前、ドッペルゲンガーのウワサについて話していたじゃないですか?アレが、今、本当に起きちゃっているんですよ」

「へ、へー大変ね!」

強引な話題転換だと知りながら、話題転換に乗ってくれる伊織と、不自然なくらいに慌てていたエリーゼもこの話題に乗ってきた。

「エリーゼセンパイ……まあ、ことの内容としては、簡単ッス。夜に一人で帰るともう一人の自分とすれ違う見たいッス。そして、すれ違うと、常に視線を感じるようになって、部屋に籠りっきりになるらしんッスが、ある日突然人が変わったみたいに部屋から出てくるらしいっスが、それは、入れ替わったドッペルゲンガーと言う噂っス」

生き生きと語る伊織だが、俺は一つだけ疑問に思ったことがあった。

「けど噂だろう。本当に起きたのか?それ、確認するすべは?」

「篠崎センパイ甘いっス。最近学校を休んでいる人が多いのは、ドッペルが原因ともっぱらのウワサっスよ!」

力強く語る伊織。なんというか、こじつけみたいに聞こえてしまうのは、俺だけではなく、話を聞いていたエリーゼも少し不思議そうだった。

「……普通に風邪じゃないの?飯塚先生も風邪ひいていたし。部屋から出たらドッペルゲンガーって確証もないじゃない」

「う……けれど、部屋から出たら、唐突に性格が明るくなっているんッスよ!おかしいっス!」

純粋な疑問だったが何の確証もない噂を話した伊織は、少し言葉に詰まり慌てていた。

「けど風邪が治ったら嬉しくてテンションが上がったとかなら説明できるぞ」

「あが!」

「そうよね。それに、そういった噂って検証のしようがないし。本当か嘘なんて判断が付かないわよね」

「うぐ……」

俺とエリーゼは、ついつい話し込み始めたのだが、先ほどまで生き生きとしていた伊織の顔は、魂の抜けた抜け殻の様になっていた。

「せ……先輩達……アンタら、絶対仲良くなっていますよね……」

「「いや、それは、ない」」

「嘘だあぁぁぁ!」

なぜか、発狂しだした伊織。周りの視線は、ものすごく痛いものであったが、気にしてはいけない。結局、伊織を保健室に連れていくことになり、エリーゼと俺は、一時間目は、休むことになってしまった。


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